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更新日:2021年3月12日
本日はすみだ3M運動「工房ショップ」の1つ、「ヒズファクトリー」の代表 中野 克彦さんにお話を伺いました。
今回お話を伺った中野さんです
ヒズファクトリーは浅草吾妻橋のふもとにお店を構え、1階に工房、2階にショップを備えています。自社ブランド革製品とオーダーメイド品も製造・販売し、革の厳選からデザイン・裁断・縫製すべての工程を工房内で一貫して行っています。社内スタッフおよび専属の職人さんの手で、一つ一つ丹精込めて手作りで製作され、既成の型を使って、自分好みの革製品をカスタマイズできるパターンオーダーと、お客様のニーズに合わせ、一から作り上げるフルオーダーを行っています。
1階の工房で作業しています
2階のショップには様々な革製品が置かれています
ヒズファクトリーの製品の素材は、主にイタリア・トスカーナ植物タンニンなめし革を使用しており「今まで多くの革を見てきた革の中で一番惚れこんだ」と中野さんは言います。化学薬品は使用せず、植物性の成分と染料に浸し、長時間かけて繊維の中まで染まっています。中まで染み込ませることで、長時間の使用に伴い、色が経年変化(エイジング)していき、使えば使うほどアンティークな味わいが出てきます。
経年変化でアンティークな味わいに変わります
中野さんは、ものづくりをするうえで“下請けからの脱却”を意識しながら仕事をしているとおっしゃっていました。
他社製品の生産をしていた2000年頃、生産のコストの安い中国や東南アジアの工場へ依頼するメーカーが増えていました。やがて国内生産に戻してもコストの安いモノを要求、材料の質、工賃は上げられず、このまま続けていても先が見えない。また、未だ大量生産、大量消費される業態は自分には合っていない、小さな工房だからできるものづくりについて、もっと考えるようになったと言います。自ら作って、自ら販売する、それしかないと思うようになりました。
お客様1人1人の要望に応え、オーダーメイドで1点物をつくることは当然、手間もコストもかかります。しかし、「素材や作りに妥協せず、一生ものの製品を作る、壊れたら何度でも修理する」、これは工房にしかできないことであり、1人のためにものを作ることを通じて、「時間やコスト、手間をかけてものを作ることは、『こだわり』ではなく、『当たり前』のことだ」と気付いたそうです。
1つ1つ手作りです
一方で、作り手が見えるものづくりは、誰が作ったのかすぐに分かってしまうため、逃げ場がないともおっしゃっていました。責任を持って製品を作り、最後まで面倒を見る、そんなプレッシャーはあるそうです。
この責任感の中で、大きな工場や大手企業にはできない、細かい配慮、安心感・親近感のある製品を提供し、工房でものを作ることを大切にしていきたいとおっしゃっていました。
永く使えるように持ち手は厚く極太ステッチで縫製されています
中野さんは、墨田区に移転して来られたそうですが、すみだの人たちとつながったことで、すみだという地域全体でものづくりを行っているという感覚が身についたそうです。区内全体に工房や工場が存在し、ものづくりで溢れた職人のまち・すみだで、人とものが触れ合いながら、ものづくりをすることは非常に良い刺激になっているとのことでした。
そして、すみだのものづくりをPRするためには、もっと作り手が、発信していくべきであり、更にすべての地域が明るく、楽しくあるべきで、そこに自分も積極的に参加しなければならないとおっしゃっていました。最近では、製品と同じ素材の革を用いたワークショップの開催やHPやSNSへの投稿など、ご自身でも積極的に発信し続けています。
素材や作りに妥協せず、工房で作り、工房で売る。作り手の顔が見えるものづくりの「当たり前」がそこにはありました。
※今回の取材・記事の作成にあたっては、日本大学の前田 夏希さんにご協力いただきました。(2017年当時)
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