3ページ 特集1 すみだの取り組みから知る“心のバリアフリー” 仕事をする、本を楽しむ、新たな情報を手に入れる、 検診で健康をチェックする。日常の営みが 少しずつ便利に、 人にやさしくなっています。 誰もが活躍できる、暮らしやすいまちへ。 すみだの取り組みをご紹介します。 “SKY WAGON”(スカイワゴン) 交流が生まれる場所 「こんにちは!」「ありがとうございます」 毎週火曜日と木曜日に、墨田区役所1階に 元気な声が聞こえます。 空色の「スカイワゴン」が開店しているからです。 パンやお菓子、雑貨類など、豊富な種類がそろっています。 今年で10年目を迎え、たくさんのファンを獲得しています。 ◎「スカイワゴン」の名前の由来は? 「大空のように広く、青空のように明るく、澄んだ心の持ち主たちが 心をこめて手作り品を販売するお店」という意味が込められています。 4ページ ◎スカイワゴンってなに? 墨田区の福祉作業所等に通う障害のある方の手作りの品物を販売して います。福祉作業所等で作られた商品を一度に見ることができ、 購入できるのが魅力です。 週に2回の開店ですが「スカイワゴンができて、 定期的に買えるようになってうれしい」という声もあります。 入学時期やクリスマス、バレンタインなどは、プレゼント購入する人が 多いそうです。 ◎販売はみんな交替で担当 墨田区福祉作業所等ネットワーク《Kai》に入っている施設が交代で担当します。 施設の利用者が販売と接客体験をすることで、あいさつや笑顔の大切さを 学んだり、働く喜びを感じたりします。 (2020年10月現在は新型コロナウイルス感染予防のため、利用者が店頭に ていない場合もあります) ◎人気のパン「ベスト5」はこれ! 1.カレーパン 2.ソーセージパン 3.コロッケパン 4.チョココロネ 5.焼きそばパン 常時20種類以上のパンを用意しますが、お昼過ぎにはほとんど完売します。 お客さまの声 ・おいしくて、値段も手ごろなので、見つけるとついたくさん買います。 一生懸命作業しているのを知っているので、応援の気持ちもあります。 ・区役所に用事で来て、お昼だからちょうどいいと思って購入しました。 初めてだけど、便利ですね。 ・庁舎に勤めているので定期的に購入します。総菜パン2個と甘めのパン1個が、 定番の買い方です。 ・かわいいマスクがあったので買いました。ワゴンにたくさんの商品があって、 ワクワクします。 学童の子どもたちから手紙が届きました。 (東駒形コミュニティ会館学童クラブの齋藤さんと郷さん) ・夏休みの学童クラブの昼食に、パンをまとめて購入しました。 地域の物にふれ、障害者支援について伝えるためですが、お弁当を作る お母さんたちに休息してもらう目的もありました。子どもたちからの おいしいパンの感想や、質問を書いた手紙をお届けに来ました。 スカイワゴン スタッフインタビュー 墨田区肢体不自由児者父母の会 菊池昌子さん 親子で手作りしたものを販売しています。子どもたちはシールを貼ったり、 袋に入れたりと簡単な作業をします。売れ筋の商品は、マスクや タオルエプロンやコースター、バッグなどです。1か月売れないものは 引きあげます。新しい商品を待っているファンの方がいるからです。 空ゆけ未来工房 中尾比呂美さん ハンバーガーとおせんべいを販売しています。利用者さんたちは施設外 での仕事は格別に楽しいようで、スカイワゴンでの販売を希望する人が 多いです。みなさん地元ですから、知り合いの方が通ると声をかけてくれます。 ニコニコしてとてもいい表情で応えています。 スカイワゴンの商品の一部 ・様々な色や形のスタンプが押された5つのポチ袋 (制作:すみだふれあいセンター福祉作業所) ・動物の絵が型押しされた革製のキーケース(制作:はばたき福祉園) ・隅田屋のあげもち(制作:隅田作業所) ・おいてけ堀かっぱ堂クッキー(制作:おいてけ堀かっぱ堂) ・ご祝儀袋(制作:はあとぴーす) ・カラフルなくるみボタンでできた感覚刺激のヘアゴム (制作:NPOのぞみ 肢体不自由児者通所訓練所) スカイワゴンの開店日 毎週火曜日と木曜日 10:00~15:00(2020年10月現在は時間短縮営業です) 区役所1階エスカレーター横 6ページ スカイワゴンの商品の制作の現場を紹介します。 就労継続支援B型 墨田さんさんプラザ おいしいパンができる場所 パン作りを始めて17年 スカイワゴンの人気商品になりました 墨田さんさんプラザは、障害のある方の働く場として60名の利用者がいます。 一人ひとりの個性や適性を生かし、可能性を最大限に引き出す取り組みを 行っています。自主生産品にも力を入れていて、手作りパンとお菓子の 製造販売はスタートから17年が過ぎました。おいしいと評判のパンは地域の みなさんに広く知られ、多くの日は完売します。 特別なパンではないけれど ていねいに作っています 「パン職人から直接学んで、パンの作り方を覚えました。40種類のパンを 作っています。新作や季節限定のパンは少なめにしています。同じパンを 作り続けることで、作業の流れや材料の種類などを覚えてもらえます」と、 施設長の大谷徹さん。17年もパンの製造を担当している利用者もいて、 とてもていねいに仕事をしています。 作る、仕込む、掃除をする 働く時間は9時~15時です。午前中はその日のパンを作って、午後は翌日の 仕込みをします。その後は、みんなで一緒に掃除です。作業台も床もとても きれいです。道具類も整然と使いやすいように並んでいます。 パン作りは楽しいから長く続けられます 自宅から30分以上かけて徒歩で通う 古川祐治さん。パン作りは立ち仕事ですが、往復歩くので体力がつき 疲れないそうです。パンは大好きですが、食べるのは週末だけです。 ダイエットをかねて、朝はバナナ1本だけです。なんと、10キロやせたそうです。 「好きな工程は成型で、特にソーセージパンの成型が好きです。いい仲間と 働いているので、毎日楽しい」と話します。 7ページ 就労継続支援B型ひだまり工房 人気の商品が生まれる場所 各自の得意分野を活かしてハンドメイド雑貨の製作・販売をしています 陽当たりのいい部屋で、利用者のみなさんがそれぞれの作業をしています。 編み物をする人、ミシンをかける人、手縫いをする人、布を折る人など、 仕事はとてもていねいです。よりよい商品づくりを目指してみんなで相談 して生まれた商品は、100種類くらいあるそうです。いまは20~30種類に 絞っています。 大人気のマスクの製作担当は9人 マスクは新型コロナウイルス感染拡大の前から商品化し、スカイワゴンや 雑貨店、薬局などに卸していて、とてもよく売れています。布を切って、 サイズどおりに折り、ミシンをかける。そしてアイロンをかけて、また ミシンをかけ、耳にかけるヒモを通すなど、いくつもの工程があります。 9人の利用者が関わりながら人気のマスクが出来上ります。 マスク作りは楽しいし やりがいがあります ミシン担当のお二人は、マスク以外のお薬手帳ケースやポーチなど、 いろいろなものを作ります。「ミシンはここで覚えました。お金をためて 家のミシンを買い、小物を作ったりしています。この間は母にエコバッグを 作ってあげました」と話してくれました。「手作りは楽しいです。 マスク作りは、やりがいがあります」 人と、社会と、つながる場が 生活の潤いになれば 精神保健福祉士である職員の高橋知佐さんは「登録されている利用者は30名 くらいですが、1日に10名前後の方が来て作業をしています。ご自身のペースに 合わせて週1回の人もいれば、毎日通所する方もいます。 みなさんとてもまじめに、コツコツ作業をしています。新しいことは苦手だったり しますが、マスクなどはいつの間にか自分たちで工夫をして作業をしています。 趣味で作っているのではなく、商品だというところに社会との接点が生まれています。 こうした場があるのは、生活の潤いになるのではないかと思っています」