8ページ ひきふね図書館 すべての人に読書の喜びを届ける場所 まだまだ知られていない 図書館サービス 読書の楽しみは、知識を広げたり、心を癒したり、豊かな人生を歩む 手助けになります。図書館はそうした本と出合える場所です。 ご存知ですか? 墨田区の図書館は1976年から障害者サービスを始めて いることを。これは全国でも相当早く、先進的な取り組みとして高く 評価されています。こうした図書館のサービスや取り組みをあらためて 知っていただくため、墨田区の障害者サービスの立ち上げから携わってきた 元墨田区職員の山内薫さんに、お話を伺いました。 「私たちは『図書館利用に障害がある方へのサービス』と、とらえています。 一人ひとりが利用できない、読めないという状況は、利用者側の障害ではなく 図書館側の障害なのだという考え方です。 今では当たり前の考え方ですが、 当時としたら先駆けだったと思います。だれでも足を骨折して入院したら、 図書館へ行くことができなくなります。実はすべての人が図書館利用の 障害者になる可能性を持っています。けっして特別な人へのサービス というわけではありません」 44年前に始めたときは、 ①図書館まで来られない方にはその方のところまで資料を届けよう。 ②視覚障害のある方が利用できる資料を用意しよう。 この2つから始めたそうです。時代の流れとともに、録音資料(デイジー図書) からマルチメディアデイジー図書、電子図書などの新たな資料が登場しています。 読むことに障害のあるさまざまな方たちに、さらに利用される可能性が広がっています。 「利用者の一人ひとりの要望に応えていくのが、図書館の役割だと思っています」と山内さん 9ページ 誰もが使える図書館として障害者サービスを考えています 最近はディスレクシア(読字障害・読み書き障害)などの発達障害が、 社会に認知されるようになりました。本を読むのが苦手、指で文字をなぞらないと うまく読めないなど、生まれつきの障害のために読むことが難しい子どもたちが 本を読む方法のひとつとして、マルチメディアデイジー図書があります。 パソコンやiPadの画面に文字が出てきて、文字を読んだ音声や画像も出てくる本です。 読む速度や文字の大きさや色を変えることができ、自分のペースで自力で読書をする ことができます。 「子どもたちの障害はさまざまで、同じではありません。 一人ひとり個性があり、読みたいジャンルや必要とする支援も違います。 個々の子どもにあった読書の方法を、本人と相談しながら一緒に探っていきますので、 図書館の受付でお気軽にご相談ください。読むことが苦手な子どもに、一人でも多く マルチメディアデイジー図書など様々な本にふれて、読書の楽しみを感じていただ きたいです」と、ひきふね図書館職員の太田千亜生さんは話します。 実際にマルチメディアデイジー図書を体験した子どもたちは、とても集中し表情が 豊かになったそうです。ひきふね図書館では、ボランティアの皆さんとマルチメディア デイジー図書の制作を手掛けています。 「誰もが使える図書館を目指したい」と太田さん ・写真1:『鬼平犯科帳』の拡大写本。小さい文字が読みづらい人のための本で、  文字を読みやすい大きさに書き直しています。 ・写真2:布の絵本。布で作られた、カレーライスと鍋と具材。  ボランティアが制作しています。 ・写真3:表面に点字の打たれた墨田区報 (墨田区のお知らせ「すみだ」も点字版があります) ・写真4:本や雑誌をCDに録音したデイジー図書 ・写真5:マルチメディアデイジー図書は、  テキスト・音声・画像の3つが同期しています。 ・写真6:ヘッドホンをつけてパソコンとマイクを前に本を読む男性 (録音室で音訳作業中のボランティア)