12ページ 「e-検査ナビ」を使った胃部X線検査 聴覚障害のある方が安心してがん検診を受けられる場所 聴覚障害のある方が安心して がん検診を受けられる場所 日本は世界一の長寿国ですが、年間約37万人ががんで亡くなっています。 死因第1位のがんも早期発見・早期治療で、生存率が9割以上に高まるため、 定期的に検診を受けることが大切です。 しかし、「わかっているけれど…」さまざまな理由で、がん検診の受診率は 低いのが実情です。特にがん検診の中でも、胃がん検診(バリウム検査)は 医師や診療放射線技師の指示のもとに受診者が動かなければならないため、 ハードルの高い検診です。そのため、たとえば聴覚障害のある方や 耳の不自由な高齢者、日本語力が十分でない外国人の場合は、 検査中の指示が聞こえない、理解ができないなどの理由で検診を受けない人が 多いそうです。また、検査を受けたとしても、十分な質が保てないことも問題でした。 こうした課題に対し開発された、胃部X線検査支援システム『e-検査ナビ』を紹介します。 検査の指示内容を文字だけでなく、イラストやアニメーションで見られ、 誰にでもわかりやすく伝えることができます。 「胃がん検診は、胃の中にバリウムを流し、 胃壁全体に付着させて鮮明な画像を撮れるようにします。 “手すりを内側から握ってください” “おなかを膨らませてください” “げっぷを我慢してください”など、細かい指示を次々に行います。 質の高い検診を行うためには、スムーズなコミュニケーションは欠かせません。 この『e-検査ナビ』はとてもよくできています」と、 公益財団法人東京都予防医学協会の峯岸純一さん(診療放射線技師)は話します。 導入した施設では効果をあげているそうです。この『e-検査ナビ』があれば、 聴覚障害のある方も、安心して受診できます。 13ページ 定期的ながん検診により誰もが健康不安のない毎日を この『e-検査ナビ』を開発した株式会社アイエスゲートは、墨田区内の ソフトウエア会社です。 「創業以来、聴覚障害者や外国人の方々向け 支援システムの開発を行っています。私は診療放射線技師として病院で 約21年間、さまざまな検査に従事していました。私自身、 20歳で左の聴力を失っていることから、病院勤務のかたわら大学院で X線検査における聴覚障害者支援研究を行っていました。医療の現場と 福祉工学、そしてアイエスゲートの歴史ある開発技術を生かして 作り出されたのが『e-検査ナビ』です」と宮田充さんは話します。 検診を受ける方は、液晶モニターやゴーグルタイプのモニターを 通して指示が確認できます。うつ伏せや横向きになっても指示の 内容が見えますので、とても安心です。実際の胃がん検診がどのように 行われるかを、手話付きの動画(YouTube)で前もって見ることができます。 墨田区では2020年度から、この『e-検査ナビ』による胃がん検診が 受けられるようになりました。年に数回、『e-検査ナビ』を導入した 検診車での受診が可能です。また、手話通訳の方も同席し、モニターを使い、 文字やイラストで事前に説明も行いますので、安心して受診することができます。 写真1:機械に取り付けられたモニター(検査室の中にも液晶モニターがあります) 写真2:操作機械と2つのモニター (指示を出す診療放射線技師と受診者はモニターで同じ映像を見て確認しています) 写真3:タブレット端末を持つ白衣の男性と、ゴーグルをつけた男性 (検査する人は液晶モニターで指示を出します。受診者はゴーグルタイプのモニターを通して、 指示のイラストを見ることができます) 写真4:「受診率の向上と精度の高い検査の実施に寄与したい、という思いで開発しました」と宮田さん。 墨田区実施の検診について、詳しくは、区のホームページをご覧ください。 https://www.city.sumida.lg.jp/kenko_fukushi/kenko/kenshin/gankenshin/cancer_i.html 動画を見てから胃がん検診(バリウム検査)を受けましょう 初めての方も安心!胃部X線検査 の流れ(字幕手話付き動画) https://www.youtube.com/watch?v=l4GAaQbM9xI