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すみだ区報(墨田区のお知らせ「すみだ」) 2020年1月11日号

 様々な種類の菊の中でも、一際目を引く菊、(ともえ)(にしき)。花弁の内側は朱色、外側は黄金色のとても華やかな菊です。起源ははっきりと分かっていませんが、遅くとも1800年代の初期から小布施で育てられ、小布施を訪れた葛飾 北斎の作品「菊図」にも描かれています。

 中央の菊が北斎巴錦。実物と照らし合わせると、花弁が開いた様が見事に描かれているのが分かります。この作品は、同財団が運営する北斎館(長野県上高井郡小布施町大字小布施485 電話:026-247-5206)で観ることができます。
*1月19日までは、すみだ北斎美術館(亀沢二丁目7番2号)で展示

 前列左から関谷 邦彦さん(会長)、石川 武司さん、後列左から市川 武彦さん、田中 利和さん、安田 正一さん、石井 みどりさん

 小布施町では、そんな菊を「巴錦」改め「北斎巴錦」として、小布施巴錦保存会(以下、保存会)を中心に、大切に守り育てていく活動を行っています。「どの家の庭先にも北斎巴錦が咲いている町」をめざす「一軒一株運動」が推進され、特に平成22年からの3年間は、菊の苗が全戸に無料で配られました。このような活動もあり、北斎巴錦は小布施の方々の生活に溶け込んだ存在となっています。
 現在は、「北斎巴錦」は商標登録され、小布施のみならず、全国にいる愛好家によって栽培されています。

 40の都道府県から注文を受け、発送します(令和元年6月10日)。全国で、その土地ならではの菊が栽培されていますが、地域によっては、「他の地域には出荷しない」という門外不出の菊もあるそう。小布施の場合は、「こんなにも美しい北斎巴錦をもっと全国に広めよう!皆で楽しもう!」という(おも)いで現在の活動を行っています。

 北斎巴錦の歴史や栽培方法を知ることができる講習会を定期的に開催し、講師を務めています。

 小布施町の唯一の小学校、栗ガ丘小学校では、毎年6年生が「総合的な学習の時間」の題材として、北斎巴錦の栽培に取り組んでいます。栽培に当たっては、保存会の皆さんが全面協力。子どもたちは、土作り、鉢への苗植え、大鉢への植替え、支柱立てなど開花するまでの全てのプロセスを一から学び、育てます。
 開花後は、町内の皇大神社で開催される「菊花展」への展示はもちろん、菊花展後は、子どもたち一人ひとりが飾りたい場所を見つけて交渉。例えばお店のレジに飾りたい子どもは店長さんに直接お願いします。こうして、北斎巴錦を通じた様々な体験から多くのことを学んでいきます。そして同時に、小布施では子どもたちが育てた菊を、様々な場所で楽しむことができるのです。
 咲き終わった後の株は家庭に持って帰ります。「さあ、来年はお家の庭でも咲かせよう。」

 子どもたちは熱心に保存会の関谷会長の説明を聞いています。今年は例年よりも生育が早く、50センチメートルほどの大きさに育っている菊も(令和元年8月23日)。

慣れない作業では、保存会の方々がしっかりとサポートします。

 令和元年秋。2度の台風が襲来し、特に、10月12日の台風19号は、小布施を流れる千曲川の氾濫や家屋などの浸水、それによる生活排水処理の機能停止など、小布施町にも大きな被害をもたらしました。
 それでも保存会の皆さんや子どもたちが育てた北斎巴錦は、今年も立派に花を咲かせました。一方、11月1日から小布施町で開催する予定だった「菊花展」は中止に。
 菊花展での展示はかないませんでしたが、例年より早くから町内の様々な場所で多くの方を楽しませました。

保存会の方が育てた菊(高井鴻山記念館内)

保存会会員の方が手掛けた大作り(高井鴻山記念館内)

小布施町章の形は保存会の関谷会長によるもの(小布施町役場内)

子どもたちの菊も立派に咲きました(小学校玄関前)

 北斎がご縁の小布施とすみだ。“小布施が誇る北斎の名を冠した菊、北斎巴錦をすみだでも咲かせたい。”
 そこで、北斎巴錦の10株の苗を保存会から分けてもらい、すみだの菊のエキスパート集団「緑と花のサポーター 菊チーム」(以下、菊チーム)の皆さんが大切に育て、令和元年11月2日から緑と花の学習園(文花二丁目12番17号)で開催された菊まつりで披露しました。また、その一部は、すみだ北斎美術館(亀沢二丁目7番2号)にも展示され、区民の方のみならず、国内外の多くの方を楽しませました。

 左から鈴木 勝夫さん、浅見 正昭さん、小泉 まさみさん、野崎 孝久さん、田辺 良文さん

 10株の苗は、1株で3輪咲きのものと5輪咲きのものに仕立てられました(令和元年11月13日)。

 こちらで紹介した北斎館所蔵の「菊図」は、1月19日(日曜日)まで、すみだ北斎美術館で開催中の「北斎 視覚のマジック 小布施・北斎館名品展」でご覧になれます(北斎巴錦の実物の展示は終了)。

 菊チームは、保存会の方々のメッセージや資料、そして様々な菊を栽培した経験をもとに北斎巴錦を育てました。

責任重大ですが、苗が楽しみです。立派な花をお見せできるよう大切に育てます!

(1)6月6日
 苗を受け取るに当たって、保存会の皆さんに向けて動画メッセージを作成。

皆さんなら大丈夫です!成長が遅い菊ですが焦らずに。

(2)6月10日
 保存会の皆さんが熱心に見ているのは、菊チームの動画メッセージと菊チームがこれまで育てた菊や栽培環境がわかるような画像。「私たちは巴錦の栽培に特化していますが、すみだは、様々な種類の菊を手掛けているんですね!」
 菊チームの皆さんに向けて動画メッセージを作成。

(3)6月12日
 苗は菊チームのもとへ。早速5号鉢へ苗を植えました。「菊の栽培は、“後で挽回”というのが難しい。毎日よく観察して、その時その時のベストを尽くします。」

(4)8月1日
 6月の苗植え直後に強風で鉢が倒れ、茎が折れるアクシデントが。しかしすぐに対応し、無事に成長、7月18日には大鉢へ植え替えました。この日は、茎を麻ひもで支柱に(くく)る誘引作業を実施。

(5)10月16日
 2度の台風を万全な対策で乗り越えました。いよいよ菊まつりの準備に入ります。

(6)11月13日
 菊まつりでは北斎巴錦に見入る来場者の姿がありました。

小布施町の広報紙9月号と12月号で、菊チームが北斎巴錦を育てる様子を紹介していただきました。

 「ほっとしました。」菊チームの方々から最初に出てきたのは(あん)()の言葉。大切に育てた菊に対する愛情と喜びが感じられました。
 「北斎巴錦は、他の品種の菊よりも成長が遅いので心配になりましたが、保存会の皆さんからお聞きしたとおり焦らず育て、無事美しく咲かせることができました。菊まつりの来場者にも楽しんでもらいました。保存会の皆さんにいつかお見せできるよう、咲かせ方のバリエーションを増やしていきたいですね。次は大作りに挑戦します。」
 菊の根元からは、早くも次の秋に咲く新たな芽(冬至芽)が顔を出しています。

このページは広報広聴担当が担当しています。