すみだ区報2018年9月11日号

文化・スポーツ

北斎名品コレクション⑲

諸国名橋奇覧 飛越の堺つりはし(大判錦絵)

橋のデザインに興味を抱いた北斎が、各地の変わった形状の橋を描いたのが、全11図からなる「諸国名橋奇覧」シリーズです。中には言い伝えだけで実在しない橋を、想像で描いたものもあります。この作品も、飛騨(岐阜県北部)と越中(富山県)の境に架かる()り橋と言われていますが、想像上の橋のようです。飛騨街道(越中街道)は古くから飛騨と越中をつなぐ交通路で、日本海の海産物や内陸の木材などの物資、そして旅人の往来が盛んでした。また、街道の東側には、立山など険しい北アルプスが連なっていました。北斎は、人々が命がけで行く秘境のイメージを、手すりもない吊り橋を描くことで表したといえるでしょう。この作品は9月11日から開催の企画展「北斎の橋 すみだの橋」の前期で展示します。