すみだ区報2020年9月11日号

文化・スポーツ

北斎名品コレクション(39)

すみだ北斎美術館に収蔵されている北斎の名品をご紹介します。

百人一首うはかゑとき(うばがえとき) 安倍仲麿(あべのなかまろ)(錦絵)

「百人一首うはかゑとき」は、乳母が子どもに百人一首を教えるために歌意を絵画化した北斎最後の大判錦絵のシリーズで、中でも本図は安倍仲麿の和歌「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」を題材にしています。安倍仲麿は遣唐留学生として唐に渡りましたが、帰国が叶わず唐で生涯を終えました。本図の中央に立つのは安倍仲麿と言われており、唐の月を眺めながら、故郷の奈良三笠山の月を(おも)う仲麿の心を、月影が水面に静かに映る情景で表現しています。本図は企画展「新収蔵品展"学芸員が選んだおすすめ50"」の前期展示(9月15日~10月11日)でご覧いただけます。