すみだ区報2020年10月11日号

文化・スポーツ

北斎名品コレクション(40)

すみだ北斎美術館に収蔵されている北斎の名品をご紹介します。

葛飾北斎「(はまぐり)売り図」(肉筆画 )

月明かりの下で(たたず)棒手振(ぼてふり)を描いた作品です。棒手振とは、天秤棒(てんびんぼう)で魚や野菜などを担いで売り歩く商人のことです。本作が描かれた江戸時代後期は隅田川界隈(かいわい)でも(しじみ)や蛤を売り歩く棒手振の姿が見られました。棒手振の持つかごには、月光に照らされる蛤が胡粉(ごふん)という白い絵の具で表されています。

作品上部には、当時狂歌師としても活躍した文人、大田南畝の画賛「蜆子(しじみ)かと思()(ほか)の蛤は()()りはまに思()つき影((しじみ)かと思ったら蛤で、まさに〝ぐりはま〞だ)」が記されています。〝ぐりはま〞とは、蛤の「はま」と「ぐり」を逆さにした言葉で、物事の手順や結果が食い違うことです。

本作は「新収蔵品展〝学芸員が選んだおすすめ50〞」展の後期(10月13日~11月8日)でご覧いただけます。