すみだ区報2021年3月11日号

文化・スポーツ

北斎名品コレクション(45)

すみだ北斎美術館に収蔵されている北斎の名品をご紹介します。

葛飾北斎「烏賊(いか)山椒図(さんしょうず)」(肉筆画)

本作品は山椒と2種の烏賊が描かれた扇子です。右が(するめ)烏賊、左が紋甲(もんごう)烏賊と考えられます。紋甲烏賊は、全体を(ねずみ)色で塗った後に胡粉(ごふん)で点を入れ、最後に薄い(くま)()りを引くことで立体感が表現されています。これは北斎が晩年に描いた「画本彩色通」で説明する烏賊の彩色法と一致します。また、作品の左に書かれた狂歌師浅草庵市人(いちんど)による(さん)「幽斎もしらぬ伝授の三鳥は(とんび)とからすと甲のしら(さぎ)」は、烏賊の口の中にあるカラストンビなどの部位も掛けて詠まれています。

本作品は、東京国立博物館で展示された平成17年(2005年)以来15年ぶりに、「筆魂 線の引力・色の魔力〝又兵衛から北斎・国芳まで〞」展の後期展示(4月4日まで)でご覧いただけます。