すみだ区報2021年5月11日号

文化・スポーツ

北斎名品コレクション(47)

すみだ北斎美術館に収蔵されている北斎の名品をご紹介します。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴(がいふうかいせい)」(錦絵)

「赤富士」の名で親しまれる「凱風快晴」は、北斎作品の中でも特に著名な作品です。一般的に、晩夏から初秋にかけての早朝に富士山が赤く見える現象を「赤富士」と呼びます。作品名の「凱風」は、南から吹いてくる夏のそよ風です。南から吹く穏やかな風に鰯雲(いわしぐも)がゆっくりと流されていく空の下で、山頂はまだ薄暗く、中腹から赤みを帯びつつある富士の姿が描かれています。晩夏や初秋の頃の徐々に夜が明けて行く富士山の様子を表現したものと考えられており、夜が明けきるまでのわずかな時間の経過を巧みに描き出した名作といえます。本作は企画展「しりあがりサン北斎サン〝クスッと笑えるSHOW TIME!〞」の後期(5月25日~6月27日)で展示されます