すみだ区報2022年4月11日号

文化・スポーツ

北斎名品コレクション(53)

すみだ北斎美術館に収蔵されている北斎の名品をご紹介します。

葛飾北斎「文鳥 辛夷花(こぶしのはな)」(錦絵)

本図は、漢詩や俳諧が画中に添えられた中判花鳥画10枚(ぞろい)の1図です。北斎は、中国絵画のスタイルを強く意識してこの絵を描いています。錦絵において本格的に花鳥画が描かれ始めたのは天保年間(1830年~1844年)頃からといわれており、北斎と歌川広重が双璧と評されています。対角線上に辛夷の木を配し、画面中央にその枝に止まる文鳥が描かれています。右下を向く文鳥に誘導される鑑賞者の視線を、上に向かって花開く辛夷が受け止める構図となっています。太めの線で描かれた堅そうな質感の枝に対し、細い線でふっくらと描かれた辛夷の花は柔らかさを感じさせます。本図は、「北斎花らんまん」展の前期(4月17日まで)で展示されています。