すみだ区報2022年12月1日号

特集

つながる すみだ(びと)

概要

すみだを愛し、すみだで活躍する人をリレー形式で紹介する「つながる すみだ人」。お話を伺った方に次の方を紹介していただき、すみだを愛する人でつないでいきます。第49回は、千年以上の歴史がある「白鬚神社」(東向島3-5-2)で明治時代初期から神社の祭祀(さいし)(つかさど)る宮司の5代目、今井 達さんです。

今井 達さん(東向島在住)

Q. すみだでどのような活動をしていますか?

白鬚神社の宮司になってから、20年が過ぎました。琵琶湖のほとりにあり猿田彦命(さるたひこのみこと)(まつ)る白鬚神社から分霊をいただき創祀(そうし)したことが白鬚神社の始まりで、西暦951年に創建されたと言われています。神社が参拝者で特に(にぎ)わうのは、正月の隅田川七福神巡りと6月に行う例大祭のときです。参拝者から 「楽しみにしていたよ」などと声を掛けられると、やはり(うれ)しいですね。元日~7日に区内6寺社を巡る隅田川七福神巡りは、都内最古の七福神巡りの1つなんですよ。

夏~秋にかけて、境内では「寺島なす」という江戸野菜を育てています。宅地化による畑の減少によって栽培が途絶えていましたが、第一寺島小学校が130周年を迎えた際に、地域ぐるみで栽培を再開しました。境内には、JA東京によって寺島なすの由緒説明板も設けられています。

Q. 現在の活動を始めたきっかけは何ですか?

江戸時代以前は「寺が神社を管理する」という考え方があり、神社に神職が常駐せず、都立墨田川高等学校の近くにある蓮花寺が、白鬚神社を管理していました。神職が常駐するようになったのは明治時代に入ってからで、私の先祖が武士から転身して、白鬚神社を管理する神職になりました。それ以降、今井家が代々白鬚神社の宮司を務めています。宮司の息子として生まれた私は、「いつか継ぐんだろうな」と幼心に思いながら育ちました。だからこそ、全く違う世界も見たかったので、大学院までは興味のあった物理を学んでいました。神職になるための学校に通い始めたのは、そのあとです。全国にある神社の出来事を伝える新聞の編集部に20年ほど務めた後、父の跡を継ぎ宮司になりました。

白鬚神社は、今井家のものではなく、あくまでもお預かりしている立場です。お預かりしているものを大切にしていくこと、つまり受け継いだものを保ち、さらに良くして次代に伝えていくことが、宮司としての1つの目標でもあり、それがまた、与えられた仕事だと思っています。

隅田川七福神詣では、各寺社が七福神をかたどった御分体を頒布します。それらを宝舟に乗せ、家の中心に向けて飾ることで福を呼び込むとされています。
実は、白鬚神社が育成母体となってボーイスカウトの活動を行っています。戦前に曽祖父が始め、戦後に再編成しました。様々な活動を通した子どもたちの成長は、見ていて嬉しいものです。

Q. 今井さんは、すみだのどんなところが好きですか?

私は、すみだに生まれ、ずっとすみだに住んでいます。ですから、よその土地を知りません。そのせいなのか、山に囲まれた地域へ赴くと違和感を覚えます。それはきっと、周りに山がなく家が建ち並ぶすみだで生まれ育ったからなのでしょう。また、起伏のない平坦な土地なのも気に入っています。

向島百花園が近いので、ふらっと訪ねて季節ごとの花々に出会えるのもいいですね。先日、隅田川七福神巡りの打ち合わせで弘福寺や長命寺の辺りを歩きましたが、新しいお店などができていて新鮮な心持ちになりました。すみだには古いものだけでなく、新しいものもたくさんありますので、お参りとともに楽しんでもらいたいですね。

次回登場してくださるのは・・・

今井さんの従兄弟(いとこ)にあたり、向島百花園の創設者である佐原鞠塢の子孫で、園内にある「茶亭さはら」を営む佐原滋元さんです。

問合せ広報広聴担当 TEL:03-5608-6223