○墨田区景観条例
平成21年3月30日
条例第10号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 総合的な施策の展開(第7条―第17条)
第3章 行為の制限等(第18条―第24条)
第4章 墨田区景観審議会(第25条―第27条)
第5章 景観まちなみ協定(第28条―第30条)
第6章 景観まちづくりの支援(第31条・第32条)
第7章 雑則(第33条)
付則
私たちのまちすみだは、隅田川などの豊かな水辺に彩られ、古くからの歴史や伝統文化に恵まれた、下町情緒豊かな魅力にあふれたまちです。
隅田川や荒川、区内を縦横に走る河川などの水辺や緑に囲まれた自然景観は、市街地に潤いをもたらせてくれます。また、多くの歴史的資源が継承されるなかで、人と人とのつながりや心意気を大切にする粋な心などが息づく下町らしさが、まちなみや人々に豊かな個性と誇りを育んできました。
こうしたすみだの特徴を活かした下町の伝統文化を将来にわたり継承し発展させていくために、水辺を活かした下町情緒を色濃く残す個性豊かな景観まちづくりを進めていく必要があります。
一方、新たなまちづくりにより生み出される景観は、すみだの新しい魅力になります。歴史と先進性が調和した国際観光都市すみだの魅力を国内外の人々と共有し、世界に誇れるおもてなしの心を育む風格ある景観まちづくりを進めていく必要があります。
そこで、「水辺と歴史に彩られ、下町情緒あふれる“すみだ風景づくり”」を目標に、協治(ガバナンス)の理念のもと、区民、事業者、区が一体となって、すみだらしい景観まちづくりを推進することにより、良好な景観の形成を実現するため、ここに「墨田区景観条例」を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、景観法(平成16年法律第110号。以下「法」という。)の規定に基づく必要な事項を定めるとともに、景観の形成に関する総合的な施策を講ずることにより、水辺と歴史に彩られた下町情緒あふれる景観まちづくりを推進し、もって良好な景観の形成を実現することを目的とする。
(用語の定義)
第2条 この条例における用語の意義は、法及び景観法施行令(平成16年政令第398号)の例によるほか、次に定めるところによる。
(1) 景観まちづくり 地域の特性を活かした魅力ある景観の形成に寄与する活動をいう。
(2) 区民 区内に住所を有する者及び区内の土地又は建築物等に関して所有権、賃借権等の権利を有する者をいう。
(3) 事業者 区内で事業活動を行う者をいう。
(4) 建築行為等 法第16条第1項第1号から第3号までに規定する行為をいう。
(5) 景観まちなみ協定 区民及び事業者(以下「区民等」という。)が、一定のまとまりのある区域について、良好な景観の形成を実現するための基準を設けて締結する協定をいう。
(基本理念)
第3条 良好な景観の形成の実現を目指すため、次に掲げることを基本理念とする。
(1) 歴史と自然を活かした下町らしい個性豊かな景観を形成すること。
(2) 世界に誇れるおもてなしの心を育む風格ある景観を形成すること。
(3) 生活の場としての親しみとやすらぎのある景観を形成すること。
(4) ともに考え、創成するすみだらしい景観を形成すること。
2 区民等及び区は、前項に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、協働して景観まちづくりに取り組むものとする。
(区民の責務)
第4条 区民は、基本理念に基づき、良好な景観の形成に関する理解を深め、及び相互に協力してこれに取り組むとともに、区が実施する施策に協力するよう努めなければならない。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、基本理念に基づき、土地の利用等による事業活動に際し、良好な景観の形成に取り組むとともに、区民が取り組む景観まちづくり及び区が実施する施策に協力するよう努めなければならない。
(区の責務)
第6条 区は、基本理念に基づき、良好な景観の形成を実現するため、総合的な施策を策定し、及び実施しなければならない。
2 区は、前項の規定による施策の策定及び実施に当たっては、区民等の意見が反映されるよう努めなければならない。
4 区は、良好な景観の形成に関する情報提供を積極的に行い、区民等の意識の啓発及び活動の支援に努めなければならない。
第2章 総合的な施策の展開
(景観基本計画)
第7条 区長は、良好な景観の形成に関する考え方を明らかにし、及びその指針を定める計画(以下「景観基本計画」という。)を策定するものとする。
3 区長は、景観基本計画の策定及び変更に当たっては、区民等の意見を聴くとともに、その意見を反映することができる措置を講じなければならない。
(景観計画の策定の手続)
第8条 区長は、景観基本計画に基づき良好な景観の形成を促進するため、法第8条第1項に規定する景観計画(以下「景観計画」という。)を策定するものとする。
2 景観計画で定める景観計画の区域(以下「景観計画区域」という。)は、墨田区全域とする。
3 区長は、第1項の規定により景観計画を策定しようとするときは、あらかじめ景観審議会の意見を聴かなければならない。
4 前項の規定は、景観計画の変更(墨田区規則(以下「規則」という。)で定める軽微な変更を除く。)について準用する。
(国等に対する要請)
第9条 区長は、景観の形成に関し必要があると認めるときは、国若しくは他の地方公共団体又はこれに準ずる団体に対し、協力を要請するものとする。
(東京都又は関係区との協議)
第10条 区長は、良好な景観の形成を総合的かつ効果的に推進するため必要があると認めるときは、東京都知事又は関係区の長に対し、協議を求めることができる。
2 区長は、東京都知事又は関係区の長から、良好な景観の形成を推進するために必要な協議を求められたときは、これに応ずるものとする。
(特定区域の指定)
第11条 区長は、景観計画区域内において、先導的に景観まちづくりに取り組む区域を特定区域として指定することができる。
(景観形成重点地区の指定等)
第12条 区長は、景観の形成上重要な区域において、景観まちづくりを推進するため必要があると認めるときは、当該区域における良好な景観の形成に関する方針、景観の形成に関する基準(次条において「景観形成方針等」という。)その他必要な事項を定めた上で、当該区域を景観形成重点地区(以下「重点地区」という。)として指定することができる。
2 区長は、前項の規定により重点地区を指定しようとするときは、あらかじめ景観審議会の意見を聴かなければならない。
3 前項の規定は、重点地区の指定の変更及び解除について準用する。
2 一定の区域に係る協議会は、区長に対し、規則で定めるところにより、当該一定の区域を重点地区として指定するよう要請することができる。
3 一定の区域に係る協議会は、前項の規定による要請を行うに当たっては、当該一定の区域における景観形成方針等を提示しなければならない。
4 重点地区に係る協議会は、区長に対し、当該重点地区の区域の変更又は当該重点地区における景観形成方針等の変更若しくは廃止について提案することができる。
6 区長は、協議会に対し、その活動を支援する必要があると認めるときは、技術的支援その他の措置を講ずることができる。
(景観重要建造物等の指定等の手続)
第14条 区長は、法第19条第1項又は法第28条第1項の規定により景観重要建造物又は景観重要樹木(以下「景観重要建造物等」という。)を指定しようとするときは、あらかじめ景観審議会の意見を聴かなければならない。
2 前項の規定は、法第27条第1項若しくは第2項又は法第35条第1項若しくは第2項の規定による指定の解除について準用する。
(景観重要建造物等の管理の方法の基準)
第15条 法第25条第2項に規定する景観重要建造物の管理の方法の基準は、次のとおりとする。
(1) 修繕を行う場合は、原則として当該修繕前の外観を変更することのないようにすること。
(2) 消火栓、消火器その他の消火設備を設けること。
(3) 水による腐食を防止するための措置を講ずること。
(4) 全体の状況について定期的に点検し、その結果を区長に報告すること。
(5) 前各号に定めるもののほか、景観重要建造物の良好な景観の保全に関し必要な措置を講ずること。
2 法第33条第2項に規定する景観重要樹木の管理の方法の基準は、次のとおりとする。
(1) 病害虫を防除するための措置を講ずること。
(2) 必要に応じ、枝打ち、整枝その他これらに類する措置を講ずること。
(3) 全体の状況について定期的に点検し、その結果を区長に報告すること。
(4) 前3号に定めるもののほか、景観重要樹木の管理に関し必要な措置を講ずること。
(景観重要建造物等の所有者等に対する支援等)
第16条 区長は、景観重要建造物等の所有者又は権原に基づく占有者(次条において「所有者等」という。)に対し、その維持又は管理のために必要があると認めるときは、技術的支援その他の措置を講ずることができる。
(すみだ風景資産の指定等)
第17条 区長は、良好な景観の形成に重要な役割を果たしていると認める建築物等を、規則で定めるところにより、すみだ風景資産として指定することができる。
2 区長は、前項の規定によりすみだ風景資産を指定しようとするときは、あらかじめ当該建築物等の所有者等の同意を得るとともに、景観審議会の意見を聴かなければならない。
3 前項の規定は、すみだ風景資産の指定の変更及び解除について準用する。
4 すみだ風景資産の所有者等は、当該資産の現状を変更しようとするときは、あらかじめその内容を区長に届け出なければならない。
5 区長は、必要があると認めるときは、前項の規定による届出に係る変更について、技術的支援その他の措置を講ずることができる。
第3章 行為の制限等
(届出書の添付書類)
第18条 景観法施行規則(平成16年国土交通省令第100号)第1条第2項第4号の条例で定める図書は、景観計画で定める法第8条第4項第2号に規定する制限に対する措置状況を記載した書類又はこれに準ずる書類とする。
(平23条34・一部改正)
(届出を要しない行為)
第19条 法第16条第7項第11号の条例で定める行為は、次のとおりとする。
(1) 仮設の建築物の建築等
(2) 建築行為等(法第16条第1項第2号に掲げる行為にあっては、規則で定める工作物に係る行為に限る。)のうち規則で定める規模以下のもの
2 前項第2号の規則で定める工作物及び規模は、景観計画区域内において定められた区域ごとに定めることができる。
(特定届出対象行為)
第20条 法第17条第1項の条例で定める行為は、建築物の建築等又は工作物の建設等のうち規則で定めるものとする。
2 前項の行為は、景観計画区域内において定められた区域ごとに定めることができる。
(事前協議)
第21条 法第16条第1項の規定による届出に係る建築行為等(第19条第1項各号に掲げるものを除く。)のうち、規則で定める行為をしようとする者は、あらかじめ区長と協議しなければならない。
2 前項の規定による協議を行おうとする者は、規則で定めるところにより、区長に申請しなければならない。
3 第1項の規則で定める行為は、景観計画区域内において定められた区域ごとに定めることができる。
(指導)
第22条 区長は、法第8条第2項第2号に規定する行為の制限に関する事項を定めたときは、当該行為の制限に適合しない行為をしようとする者又はした者に対し、当該行為の制限に適合させるために必要な措置を講ずるよう指導することができる。
(平23条34・一部改正)
(勧告の手続等)
第23条 区長は、法第16条第3項の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ景観審議会の意見を聴かなければならない。
2 区長は、前項の勧告を受けた者が正当な理由なくその勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
3 区長は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該勧告を受けた者に対し、意見を述べ、及び証拠を提示する機会を与えなければならない。
(変更命令等の手続)
第24条 区長は、法第17条第1項又は第5項の規定により必要な措置を命じようとするときは、あらかじめ景観審議会の意見を聴かなければならない。
第4章 墨田区景観審議会
(設置)
第25条 良好な景観の形成を推進するため、区長の附属機関として墨田区景観審議会(以下「審議会」という。)を設置する。
(所掌事務)
第26条 審議会は、区長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議するとともに、景観の形成に関し区長に意見を述べることができる。
(1) 景観基本計画及び景観計画の策定等に関すること。
(2) 重点地区の指定等に関すること。
(3) 景観重要建造物等の指定等に関すること。
(4) すみだ風景資産の指定等に関すること。
(5) 建築行為等を行う者に対する勧告、変更命令等に関すること。
(6) 前各号に掲げるもののほか、景観の形成に係る重要な事項に関すること。
(組織等)
第27条 審議会は、区民等、学識経験を有する者及び行政機関の職員の中から区長が委嘱する委員10人以内をもって組織する。
2 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 専門の事項を調査審議させるため、審議会に専門部会を置くことができる。
4 専門部会は、区長が委員の中から選任する者及び委員以外の者から選任する専門委員をもって組織する。
5 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第5章 景観まちなみ協定
(景観まちなみ協定の認定)
第28条 景観まちなみ協定を締結した者は、その活動に対する支援等を受けようとするときは、区長に対し、当該景観まちなみ協定の認定を申請することができる。
2 区長は、前項の規定により申請された景観まちなみ協定が、良好な景観の形成に寄与するものであり、かつ、規則で定める要件を満たしていると認めるときは、審議会の意見を聴いた上で、当該景観まちなみ協定を認定することができる。
3 区長は、前項の規定による認定を受けた景観まちなみ協定の内容を実現するため必要があると認めるときは、当該景観まちなみ協定を締結した者に対し、技術的支援その他の措置を講ずることができる。
(景観まちなみ協定の変更等の届出)
第29条 前条第2項の規定による認定を受けた景観まちなみ協定を締結した者は、当該景観まちなみ協定において定めた事項を変更し、又は当該景観まちなみ協定を廃止したときは、区長に届け出なければならない。
(景観まちなみ協定の認定の取消し)
第30条 区長は、前条の規定による変更の届出があった場合において当該変更に係る内容が良好な景観の形成上適当でないと認めるときは、当該認定を取り消すことができる。
2 区長は、前条の規定による廃止の届出があったときは、当該認定を取り消すものとする。
3 区長は、第1項の規定により景観まちなみ協定の認定を取り消そうとするときは、あらかじめ審議会の意見を聴かなければならない。
第6章 景観まちづくりの支援
(景観アドバイザー)
第31条 区長は、区民等との協働による景観の形成を推進するため、景観まちづくりに関する専門知識を有する者を、景観アドバイザーとして置くことができる。
2 景観アドバイザーは、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 第21条第1項の規定による事前協議に係る指導、誘導、技術的支援等に関すること。
(2) 区の公共建築物又は公共施設の整備に係る助言に関すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、区長が必要と認めること。
(表彰)
第32条 区長は、良好な景観の形成に資する活動を行っている区民等又は良好な景観の形成に資する建築物等、すみだ風景資産等を表彰することができる。
2 区長は、前項の規定による表彰に当たっては、あらかじめ審議会の意見を聴くものとする。
第7章 雑則
(委任)
第33条 この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。
付則
(平成21年規則第58号により平成21年11月2日から施行)
(2) 付則第5項の規定 公布の日
3 第8条第1項の規定による景観計画の策定前においては、法第8条第1項の規定により東京都が定めた景観計画のうち区の区域に係る部分を区の景観計画とみなす。
(準備行為)
5 施行日以後の景観計画の策定、審議会の設置等に関し必要な手続、準備行為等は、施行日前においても、この条例の規定の例により行うことができる。
付則(平成23年12月12日条例第34号)
この条例は、公布の日から施行する。