○墨田区いじめ防止対策推進条例

平成26年12月10日

条例第48号

(目的)

第1条 この条例は、いじめが、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み、児童等の尊厳を保持するため、区におけるいじめの防止等のための対策に関し、基本理念を定め、区の責務を明らかにするとともに、いじめの防止等のための対策の基本となる事項を定めることにより、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) いじめ 児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

(2) いじめの防止等 いじめの防止、いじめの早期発見及びいじめへの対処をいう。

(3) 学校 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校(幼稚部を除く。)をいう。

(4) 児童等 区内の学校に在籍する児童又は生徒をいう。

(5) 保護者 親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。

(6) 事業者 区内において、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第6条の3第2項に規定する放課後児童健全育成事業、学習塾、スポーツ教室その他の児童等を対象とした事業を行う個人又は団体をいう。

(平28条14・一部改正)

(基本理念)

第3条 いじめの防止等のための対策は、全ての児童等が「やさしさ」及び「おもいやり」の心を大切にし、安心して学習その他の活動に取り組むことができるよう、学校の内外を問わずいじめが行われなくなるようにすることを旨として行われなければならない。

2 いじめの防止等のための対策は、全ての児童等が他の児童等に対して行われるいじめを認識しながらこれを放置することなく、いじめの解決に向けて主体的に行動することができるようにするため、いじめが児童等の心身に及ぼす影響その他のいじめの問題に関する児童等の理解を深めることを旨として行われなければならない。

3 いじめの防止等のための対策は、いじめを受けた児童等の生命及び心身を保護し、児童等をいじめから確実に守るため、地方公共団体、学校、地域住民、家庭、事業者その他の関係者の連携の下、地域社会全体でいじめの問題を克服することを目指して行われなければならない。

(いじめの禁止)

第4条 児童等は、いじめを行ってはならない。

(区の責務)

第5条 区は、第3条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、いじめの防止等のための体制を整備するとともに、他の地方公共団体、学校、保護者、地域住民、事業者その他の関係者と協力して、いじめの防止等のために必要かつ効果的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(教育委員会の責務)

第6条 教育委員会は、基本理念にのっとり、墨田区立学校設置条例(昭和39年墨田区条例第24号)別表に掲げる小学校及び中学校(以下「区立学校」という。)の設置及び管理に関する事務を行う者として、区立学校におけるいじめの防止等のために必要な措置を講ずる責務を有する。

(区立学校及び区立学校の教職員の責務)

第7条 区立学校及び区立学校の教職員は、基本理念にのっとり、当該区立学校に在籍する児童等の保護者、地域住民、児童相談所、事業者その他の関係者との連携を図りつつ、区立学校全体でいじめの防止及び早期発見に取り組むとともに、当該区立学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。

(保護者の責務)

第8条 保護者は、子の教育について第一義的に責任を有するものであって、その保護する児童等がいじめを行うことのないよう、当該児童等に対し、規範意識を養うための指導その他の必要な指導を行うよう努めるものとする。

2 保護者は、その保護する児童等がいじめを受けた場合には、適切に当該児童等をいじめから保護するものとする。

3 保護者は、区、学校の設置者及び学校が講ずるいじめの防止等のための措置に協力するよう努めるものとする。

(地域住民及び事業者の役割)

第9条 地域住民及び事業者は、国、東京都及び区が実施するいじめの防止等のための対策に協力するよう努めるものとする。

(財政上の措置等)

第10条 区は、いじめの防止等のための対策を推進するために必要な財政上の措置その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(墨田区いじめ防止対策基本方針)

第11条 区は、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)第12条の規定により、区におけるいじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。

(区立学校いじめ防止基本方針)

第12条 区立学校は、法第13条の規定により、当該区立学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針を定めるものとする。

(墨田区いじめ問題対策協議会)

第13条 区は、いじめの防止等に関係する機関及び団体の連携を図るため、法第14条第1項の規定により、学校、教育委員会、児童相談所、東京法務局、警察その他の関係者により構成される墨田区いじめ問題対策協議会(以下「協議会」という。)を置く。

2 協議会は、いじめの防止等のための対策の推進に関する事項について協議を行う。

(墨田区教育委員会いじめ問題専門委員会)

第14条 基本方針に基づくいじめの防止等のための対策を実効的に行うため、法第14条第3項の規定により、教育委員会の附属機関として、墨田区教育委員会いじめ問題専門委員会(以下「専門委員会」という。)を置く。

2 専門委員会は、教育委員会の諮問に応じ、いじめの防止等のための対策の推進について、調査審議し、及び答申する。

3 専門委員会は、いじめの防止等のための対策の推進について、必要があると認めるときは、教育委員会に意見を述べることができる。

4 専門委員会は、学識経験を有する者、法律、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者のうちから、教育委員会が任命する委員をもって組織する。

5 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合の補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。

6 委員は、再任されることができる。

(区立学校におけるいじめの防止)

第15条 教育委員会及び区立学校は、当該区立学校において、児童等の豊かな情操と道徳心を培い、心の通う対人交流の能力の素地を養うことがいじめの防止に資することを踏まえ、全ての教育活動を通じた道徳教育及び体験活動等の充実を図らなければならない。

2 教育委員会及び区立学校は、当該区立学校におけるいじめを防止するため、当該区立学校に在籍する児童等の保護者、地域住民、事業者その他の関係者との連携を図りつつ、いじめの防止に資する活動であって当該区立学校に在籍する児童等が自主的に行うものに対する支援、当該区立学校に在籍する児童等及びその保護者並びに当該区立学校の教職員に対するいじめを防止することの重要性に関する理解を深めるための啓発その他必要な措置を講ずるものとする。

(いじめの早期発見のための措置)

第16条 教育委員会及び区立学校は、当該区立学校におけるいじめを早期に発見するため、当該区立学校に在籍する児童等に対する定期的な調査その他の必要な措置を講ずるものとする。

2 区は、いじめに関する通報及び相談を受け付けるための体制の整備に必要な施策を講ずるものとする。

3 教育委員会及び区立学校は、当該区立学校に在籍する児童等及びその保護者並びに当該区立学校の教職員がいじめに係る相談を行うことができる体制を整備するものとする。

4 教育委員会及び区立学校は、前項に規定する相談体制を整備するに当たっては、家庭、地域社会等との連携の下、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利その他の権利利益が擁護されるよう配慮するものとする。

(区長による報告又は協議の要求)

第17条 区長は、必要があると認めるときは、区立学校におけるいじめの早期発見及びいじめへの対処について、教育委員会に対して状況の報告又は協議を求めることができる。

(関係者間の連携等)

第18条 区は、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援、いじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言その他のいじめの防止等のための対策が関係者の連携の下に適切に行われるよう、他の地方公共団体、学校、家庭、地域住民、事業者その他の関係者の間の連携の強化、事業者への支援その他必要な体制の整備に努めるものとする。

(いじめの防止等のための対策に従事する人材の確保及び資質の向上)

第19条 区は、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援、いじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言その他のいじめの防止等のための対策が専門的知識に基づき適切に行われるよう、区立学校における教員の資質の向上、生徒指導に係る体制等の充実のための教諭、養護教諭その他の教員の配置、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者であっていじめの防止を含む教育相談に応ずるものの確保、いじめへの対処に関し助言を行うために区立学校の求めに応じて派遣される者の確保等必要な措置を講ずるものとする。

2 教育委員会及び区立学校は、当該区立学校の教職員に対し、いじめの防止等のための対策に関する研修の実施その他のいじめの防止等のための対策に関する資質の向上に必要な措置を計画的に行わなければならない。

(インターネットを通じて行われるいじめに対する対策の推進)

第20条 教育委員会及び区立学校は、当該区立学校に在籍する児童等及びその保護者が、発信された情報の高度の流通性、発信者の匿名性その他のインターネットを通じて送信される情報の特性を踏まえて、インターネットを通じて行われるいじめを防止し、及び効果的に対処することができるよう、これらの者に対し、必要な啓発活動を行うものとする。

2 区は、児童等がインターネットを通じて行われるいじめに巻き込まれていないかどうかを監視する関係機関又は関係団体の取組を支援するとともに、インターネットを通じて行われるいじめに関する事案に対処する体制の整備に努めるものとする。

(いじめの防止等のための対策の調査研究の推進等)

第21条 区は、いじめの防止及び早期発見のための方策等、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言の在り方、インターネットを通じて行われるいじめへの対応の在り方その他のいじめの防止等のために必要な事項及びいじめの防止等のための対策の実施の状況についての調査研究及び検証を行うとともに、その成果を普及するものとする。

(啓発活動)

第22条 区は、いじめが児童等の心身に及ぼす影響、いじめを防止することの重要性、いじめに係る相談制度又は救済制度等について必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。

(学校評価における留意事項)

第23条 区立学校の評価を行う場合においていじめの防止等のための対策を取り扱うに当たっては、いじめの事実が隠蔽されず、並びにいじめの実態の把握及びいじめに対する措置が適切に行われるよう、いじめの早期発見、いじめの再発を防止するための取組等について適正に評価が行われるようにしなければならない。

(区立学校におけるいじめの防止等の対策のための組織)

第24条 区立学校は、当該区立学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該区立学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする。

(いじめに対する措置)

第25条 区立学校の教職員、区の職員その他の児童等からの相談に応ずる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする。

2 区立学校は、前項の規定による通報を受けたときその他当該区立学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、速やかに、当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、その結果を教育委員会に報告するものとする。

3 区立学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該区立学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。

4 区立学校は、前項の場合において必要があると認めるときは、いじめを行った児童等についていじめを受けた児童等が使用する教室以外の場所において学習を行わせる等いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を講ずるものとする。

5 区立学校は、当該区立学校の教職員が第3項の規定による支援又は指導若しくは助言を行うに当たっては、いじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争いが起きることのないよう、いじめの事案に係る情報をこれらの保護者と共有するための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。

6 区立学校は、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは所轄警察署と連携してこれに対処するものとし、当該区立学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に援助を求めなければならない。

(教育委員会による措置)

第26条 教育委員会は、前条第2項の規定による報告を受けたときは、必要に応じ、当該報告に係る区立学校に対し必要な支援を行い、若しくは必要な措置を講ずることを指示し、又は当該報告に係る事案について自ら必要な調査を行うものとする。

(校長及び教員による懲戒)

第27条 区立学校の校長及び教員は、当該区立学校に在籍する児童等がいじめを行っている場合であって教育上必要があると認めるときは、学校教育法第11条の規定により、適切に当該児童等に対して懲戒を加えるものとする。

(出席停止制度の適切な運用等)

第28条 教育委員会は、いじめを行った児童等の保護者に対して学校教育法第35条第1項(同法第49条において準用する場合を含む。)の規定により当該児童等の出席停止を命ずる等、いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を速やかに講ずるものとする。

(学校相互間の連携協力に関する措置)

第29条 区は、いじめを受けた児童等といじめを行った児童等が同じ学校に在籍していない場合であっても、学校がいじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を適切に行うことができるようにするため、学校相互間の連携及び協力に必要な措置を講ずるものとする。

(事業者による措置等)

第30条 事業者は、その事業活動において、いじめの防止のために必要な措置を講ずるよう努めるとともに、児童等からいじめに係る相談を受け、又はいじめの事実があると思われるときは、いじめを受け、又はいじめを行っていると思われる児童等がそれぞれ在籍する学校及び教育委員会その他の関係者への通報等いじめの早期発見のための適切な措置をとるよう努めるものとする。

2 事業者は、前項の規定によりいじめの早期発見に係る措置をとった場合においては、学校が行う当該いじめへの対処に関し協力するよう努めるものとする。

(区立学校における重大事態に係る対処)

第31条 区立学校は、法第28条第1項に規定する重大事態(以下「重大事態」という。)が発生した場合には、教育委員会を通じて、その旨を区長に報告しなければならない。

2 法第28条第1項の規定による調査は、専門委員会が行うものとする。

3 教育委員会及び区立学校は、専門委員会が前項の規定による調査(以下「重大事態調査」という。)を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。

4 教育委員会は、重大事態調査及び前項の規定による情報の提供について必要な指導及び支援を行うものとする。

5 専門委員会は、重大事態調査を行ったときは、その結果を教育委員会に報告するものとする。

6 教育委員会は、前項の規定による報告を受けたときは、その旨を区長に報告するものとする。

(区長の調査等)

第32条 区長は、前条第6項の規定による報告を受けた場合において、当該報告に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは、重大事態調査の結果について調査を行うものとする。

2 前項の規定による調査(以下「重大事態区長調査」という。)は、次条に規定する墨田区いじめ問題調査委員会が行うものとする。

3 区長は、重大事態区長調査を行うときにあってはその旨を、当該調査が終了したときにあってはその結果を区議会に報告しなければならない。

4 区長は、重大事態区長調査に当たって、いじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査の結果等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。

5 区長及び教育委員会は、重大事態区長調査の結果を踏まえ、自らの権限及び責任において、当該調査に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のために必要な措置を講ずるものとする。

(墨田区いじめ問題調査委員会)

第33条 区長は、重大事態区長調査を行わせるための附属機関として、墨田区いじめ問題調査委員会(以下「調査委員会」という。)を置く。

2 調査委員会は、学識経験を有する者、法律、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者で、専門委員会の委員以外のもののうちから、区長が任命する委員をもって組織する。

3 委員の任期は、区長が任命したときから重大事態区長調査が終了するときまでとする。

(委任)

第34条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、墨田区規則又は墨田区教育委員会規則で定める。

この条例は、公布の日から施行する。

(平成28年3月30日条例第14号)

この条例は、平成28年4月1日から施行する。

墨田区いじめ防止対策推進条例

平成26年12月10日 条例第48号

(平成28年4月1日施行)

体系情報
例規集/第8類 民/第5章 青少年対策
沿革情報
平成26年12月10日 条例第48号
平成28年3月30日 条例第14号