○墨田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例
平成31年3月19日
条例第7号
手話は、意思疎通のための手段のひとつであって、音声ではなく、手や指などの体の動きや顔の表情を使う独自の語彙や文法体系を持つ言語です。私たちは、手話が独自の言語体系を有する文化的所産であり、日常生活や社会生活を営むために大切に受け継がれてきた言語であることを深く認識し、その理解の普及に努めていかなければなりません。
また、障害者基本法は、全て障害者は、可能な限り、意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されることなどを旨として、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現が図られなければならないとしています。
誰もが心を通わせ、温かな住みやすい地域社会をつくるためには、円滑な意思疎通や十分な情報の取得が必要です。そして、災害時などの非常時にも誰もが安心して生活を送るためには、障害者の意思疎通に係る理解を促進し、意思疎通手段を普及していくことが不可欠です。
墨田区は、これまで育んできた人と人とのつながりを感じる下町情緒を大切にし、障害者の意思疎通について温かな配慮を行っていきます。また、「国際観光都市すみだ」の実現を目指し、墨田区に暮らす人や働く人だけでなく、墨田区を訪れる障害者が必要とする情報の取得や意思疎通に資する環境の整備に意を用いていきます。
私たちは、手話を言語として認識するとともに、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会を実現することを目指し、この条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、障害者の意思疎通に係る理解の促進並びに手話及び意思疎通手段の普及に関し、基本理念を定めるとともに、区の責務並びに区民及び事業者の役割を明らかにすることにより、手話及び意思疎通手段がより利用しやすい環境を目指し、障害の有無にかかわらず、相互に人格及び個性を尊重し合いながら共生する地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)のある人であって、障害及び社会的障壁(障害のある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) 意思疎通手段 要約筆記、筆談、音訳、代筆及び代読並びに点字及び意思伝達装置の使用その他の障害者が意思疎通を図るために必要とする手段(手話を除く。)をいう。
(3) 事業者 区内において事業活動を行う法人その他の団体及び個人をいう。
(基本理念)
第3条 区が行う障害者の意思疎通に係る理解の促進並びに手話及び意思疎通手段の普及は、次に掲げる事項を基本理念として行う。
(1) 手話は、独自の言語体系を有する文化的所産であって、言語であること。
(2) 障害のある人とない人が互いを理解し、その人格及び個性を尊重すること。
(3) 障害者の意思疎通を円滑に図る権利は、最大限尊重されなければならないこと。
(区の責務)
第4条 区は、障害者の意思疎通に係る理解の促進並びに手話及び意思疎通手段の普及を図るとともに、障害者が手話及び意思疎通手段を円滑に利用し、並びに必要な情報を取得することができるよう障害者の意思疎通に関する施策を推進するものとする。
(区民の役割)
第5条 区民は、障害者の意思疎通に係る理解を深めるとともに、前条の規定により区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割等)
第6条 事業者は、障害者の意思疎通に係る理解を深めるとともに、第4条の規定により区が推進する施策に協力するほか、障害者が手話及び意思疎通手段を円滑に利用し、並びに必要な情報を取得することができるよう環境の整備に努めるものとする。
2 区は、この条例の目的の実現に向けた事業者の自主的な取組を促進するため、情報提供、助言等を行うものとする。
(施策の実施)
第7条 区は、第4条に規定する責務を果たすため、次に掲げる施策を実施する。
(1) 手話及び意思疎通手段の普及のための啓発
(2) 手話及び意思疎通手段の利用に資する環境整備
(3) 手話及び意思疎通手段を習得する機会の提供
(4) 手話及び意思疎通手段による情報の発信等
(5) 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策
付則
この条例は、平成31年4月1日から施行する。