○墨田区こども条例

令和7年3月28日

条例第15号

全てのこどもは、一人の人間として大切にされるかけがえのない存在です。

こどもは、どのような理由によっても差別されず、地域社会全体で大切に守られ、愛されながら、安心して他の人々とともに生き、夢や希望を持って成長していくことを大切にされなければなりません。

こどもは、自らの自由な意思や選択で、学び、遊び、休むことができます。このような自分の意思が尊重されることで、なりたい自分に向かって挑戦することができ、未来を切り開く力が育まれます。

こどもは、自分の意思を伝え、自分のことが認められ、他の人々を思いやるように成長することで、地域社会をつくる一員として、自ら学び、大人とともに育ち、ともに参画することができます。

区は、令和4年に制定されたこども基本法と平成18年に制定された教育基本法の精神にのっとり、こどもの権利を大切にしながら、区民や地域社会において、こどもの健やかな育ちを支え、「笑顔あふれる、こどもの最善の利益を優先するまちすみだ」を目指すことを宣言し、この条例を制定します。

(目的)

第1条 この条例は、こどもの大切な権利を守っていくために、その基本となる考え方を区全体で共有し、こどもとこどもに関わる全ての人が、こどもにとって最も良いことは何かを考え、行動することで、「笑顔あふれる、こどもの最善の利益を優先するまちすみだ」を実現することを目的とします。

(言葉の意味)

第2条 この条例で使う言葉の意味は、それぞれ次のとおりです。

(1) こども 区内に在住し、在学し、在勤している人などで、心身の発達の過程にある人をいいます。

(2) 保護者 親などのこどもを養育する人をいいます。

(3) 区民等 区内に在住し、在学し、在勤している人、区内の町会・自治会、子育てを支援する団体、地域団体や区内において事業活動を行う事業者などをいいます。

(4) 育ち学ぶ施設 区内にある保育所、幼稚園、学校、児童館、公園などのこどもが育ち、学び、活動するために利用する施設をいいます。

(基本理念)

第3条 「笑顔あふれる、こどもの最善の利益を優先するまちすみだ」の実現に当たっては、次に定める考え方を基本理念とします。

(1) 全てのこどもについて、個人として尊重され、基本的人権が保障され、差別を受けないこと。

(2) 全てのこどもについて、適切に育てられ、生活を保障され、愛され保護されることなどの福祉に関する権利が等しく保障されること。

(3) 全てのこどもについて、教育を受ける機会が平等に与えられること。

(4) 全てのこどもについて、年齢と発達の程度に応じて、意見を表明する機会や社会的活動に参画する機会が確保されること。

(5) 全てのこどもについて、年齢と発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。

(6) 子育てに夢を持ち、子育ての喜びを実感することができる社会環境を整備すること。

(7) 地域社会全体でこどもの育ちを支えること。

(8) こどもの声を聴き、こどもとの対話を大切にすること。

(こどもの大切な権利)

第4条 区、保護者、区民等、育ち学ぶ施設の関係者は、前条の基本理念に基づき、次の5つの権利が守られるよう努めます。

(1) 守られる権利

 命が守られること。

 あらゆる犯罪、暴力、虐待、いじめなどから心身ともに守られること。

 こどもであるということや家庭環境、経済的な状況、障害、性別、性自認、国籍、人種、民族、文化などのあらゆることによって差別を受けないこと。

(2) 自分らしく育つ権利

 自分のペースに合わせて学び、遊び、休むことができること。

 失敗しても繰り返し挑戦することができる環境が整えられること。

 年齢と発達の程度に応じて、自分で自分のことを決められること。

(3) 愛される権利

 ありのままの自分を受け入れてもらうこと。

 自分の考えや気持ち、個性や能力が尊重され、大切にされること。

(4) 教育を受ける権利

 教育を受ける機会が平等に与えられること。

 将来の社会生活に役立つ実践的な学びについての教育が受けられること。

 何が良くて何が悪いかを判断する力や相手を思いやる気持ちを育む教育が受けられること。

(5) 意見を表明し、参画する権利

 自分の意見を表明し、その意見が尊重されること。

 地域で行われる活動に参加することや自分から活動を始めることができること。

 主体的に社会と関わることができるよう、ルールや決まり事の背景や意味について、説明を受けることができること。

(保護者の役割)

第5条 保護者は、こどもに対する第一義的責任を持つとともに、こどもの人格を尊重し、尊厳を守るよう努めるものとします。

2 保護者は、こどもを大切な存在として受け入れ、愛されて育つことができる環境を整え、こどもの健やかな成長を支えるよう努めるものとします。

(区民等の役割)

第6条 区民等は、地域社会全体でこどもを育てていくことを理解し、こどもの健やかな育ちのために協力し、こどもの権利を守る役割を持ちます。

2 区民等は、こどもが健やかに育ち、地域の中で安心して過ごすことができるよう、こどもを見守り、支援する役割を持ちます。

(育ち学ぶ施設の関係者の役割)

第7条 育ち学ぶ施設の関係者は、育ち学ぶ施設が安全で安心して過ごすことができる居場所となるよう努めるものとします。

2 育ち学ぶ施設の関係者は、こどもが学び、遊び、活動する機会などを確保することで、こどもの健やかな成長や自立を図るよう努めるものとします。

3 育ち学ぶ施設の関係者は、一人ひとりの個性を尊重するよう努めるものとします。

(区の責務)

第8条 区は、第4条のこどもの大切な権利を守るため、次条から第12条までに定める方針に基づき、こどもに関する施策を総合的に実施します。

2 区は、保護者、区民等、育ち学ぶ施設の関係者、東京都、国などと連携し、こどもの最善の利益を優先するまちづくりを推進します。

(こどもへの支援の方針)

第9条 区は、こどもに対して丁寧で誠実な説明を行い、対話をしながら支援を行います。

2 区は、こどものライフステージに応じて切れ目ない支援を行います。

3 区は、こどもが自分らしく心豊かに育つことができる環境をつくります。

4 区は、こどもが安心して過ごし、学び、遊び、活動するために必要な居場所をつくります。

(保護者や子育て家庭への支援の方針)

第10条 区は、保護者が子育てに夢を持ち、子育ての喜びを実感することができるよう、子育てしやすい環境づくりを推進します。

2 区は、配慮が必要なこどもや子育て家庭への支援の充実を図ります。

(区民等への支援の方針)

第11条 区は、区民等が地域で行うこどもの健やかな育ちを支える取組について、必要な支援を行います。

(育ち学ぶ施設への支援の方針)

第12条 区は、育ち学ぶ施設において実施するこどもの権利を大切にする取組について、必要な支援を行います。

(こどもの意見表明と地域社会への参画)

第13条 区は、こどもが自分の意見を表明しやすい環境づくりを行い、地域社会へ参画する機会を確保します。

2 区は、様々な状況にあって意見を表明することが難しいこどもについても、その意見が施策に反映されるよう、十分な配慮を行います。

(こどもの多様な学びと体験の機会の確保)

第14条 区は、こどもが自らの創造力を広げ、その可能性を最大限に発揮することができるよう、多様な学びの場を拡充するとともに、こどもの体験の機会を確保します。

(こどもの権利の普及)

第15条 区は、この条例に定めるこどもの権利について、こども、保護者、区民等が学び、理解することができるよう普及に努めるものとします。

(推進計画)

第16条 区は、こどもに関する施策を総合的に推進するための計画を定めます。

2 区は、前項の計画の策定に当たっては、第3条の基本理念にのっとるものとします。

(財政上の措置)

第17条 区は、こどもに関する施策を総合的に推進するため、必要な財政上の措置を行うよう努めるものとします。

(委任)

第18条 この条例に定めるもののほか、必要なことは、区長が別に定めます。

この条例は、令和7年4月1日から施行します。

墨田区こども条例

令和7年3月28日 条例第15号

(令和7年4月1日施行)