すみだ区報2018年5月11日号

特集

小布施とすみだのつながり その原点を探る

小布施の鴻山とすみだの北斎

小布施を拠点とする信州の豪農豪商・髙井家の四男として文化3年(1806年)に生まれた髙井鴻山は、幼い頃から恵まれた環境で学問や芸術に親しみ、京都や江戸に遊学しました。鴻山と北斎がいつ、どこで出会ったのかについては諸説ありますが、金田さんは、鴻山が江戸を訪れたときに、小布施に本店がある日本橋の呉服商「十八屋」を介して出会ったのではないかと言います。

「墨田区では、なぜ北斎さんが小布施に行ったと言われているの?」と金田さん。「初めから絵の仕事があって小布施に来たわけではないのでは、と私は考えています。北斎さんが80代初期だった頃は、江戸は天保の()(きん)とその後の改革で芸術家たちも苦しい生活を強いられ、北斎さんは思うような絵を描くことができない状況にありました。そんなときに、かつて鴻山さんが北斎さんにかけた"何かあったときは、ぜひ、小布施にお越しください"という言葉を思い出したのかもしれません。」と、当時の社会情勢と北斎の作画への情熱を重ね合わせた持論を披露してくれました。