小布施を拠点とする信州の豪農豪商・髙井家の四男として文化3年(1806年)に生まれた髙井鴻山は、幼い頃から恵まれた環境で学問や芸術に親しみ、京都や江戸に遊学しました。鴻山と北斎がいつ、どこで出会ったのかについては諸説ありますが、金田さんは、鴻山が江戸を訪れたときに、小布施に本店がある日本橋の呉服商「十八屋」を介して出会ったのではないかと言います。
「墨田区では、なぜ北斎さんが小布施に行ったと言われているの?」と金田さん。「初めから絵の仕事があって小布施に来たわけではないのでは、と私は考えています。北斎さんが80代初期だった頃は、江戸は天保の