すみだ区報2021年3月11日号

特集

光の先へ 持続可能なすみだの未来

cafe さぶたけ(東向島2-31-17)

常連さんや必要としている方が、いつでも来ることができる場所でありたい。

工藤 チェコさん(オーナー)

〝さぶたけ〞のはじまり

「おかえり」と常連さんを温かく迎えるcafeさぶたけのオーナー工藤さん。以前この場所には、ご両親が営む洋菓子店がありました。「全部は無理だけど、プリンをはじめとする父の味を少しでも引き継ぎたい。」とcafeさぶたけをオープンして7年が経ちます。「さぶたけは父の〝さぶろう〞と母の〝たけの〞から。せっかく両親の大切なお店のあった場所を継いでいるわけですし、覚えやすい親しみのある名前がいいと思って。」

工藤さんは、ご自身が病気を経験したこともあり、店内のトイレや入口のスロープをバリアフリー化しました。双子用のベビーカーでも入店でき、トイレには、おむつ替えのスペースも用意しています。

人とのつながり

自らの育児経験や、子育て支援に携わった経験から、「子どもが来たら、店内で自由に遊んでもらっています。ただし、悪いことをしたら、しっかり叱りますけどね。」とほほ笑みます。また、工藤さんは認知症サポーターとしても活動しています。「私たちの親世代がこれまで頑張ってきてくれたからこそ、今の私たちがあるので、感謝していきたいです。私の両親やここへ来るお客さんの役に立てるよう、今のうちに知識を付けておけば、会話の中で何かに気付いて、支援につなげられると思います。」

さらには、居場所を探してやってくるお客さんもいます。「ここら辺は、昔は全然違う街でしたよ。」と工藤さんや常連さんは口をそろえて言います。「マンションが増えて人と話す機会が少なくなって、人とのつながりを求めてここへ来てくれる人もいます。」と工藤さんは地域の方に温かい視線を送ります。

必要な方のために

「自粛が続くと、高齢者は家にこもりがちになり、健康にもよくないのでは。」と工藤さんは懸念します。あるとき、しばらく来なくなった常連客のご家族から連絡が入りました。〝高齢だから心配だけど、さぶたけなら安心できるので、少しだけ行かせてもいいか〞と。「もちろん快くお迎えしました。必要だと思ってくださる方がいつでも来ることができるような場所に、と思っているので、うちは大きな看板も出してないし、SNSなどでも積極的に発信していません。いつも来てくれる常連さんが楽しんでもらえるようなお店であり続けたいです。」と工藤さんは語ります。

その先には光がある

新型コロナウイルス感染症の影響で、工藤さんもテイクアウトなど、新しいことに挑戦したと言います。「始めてみると、そればかりに振り回されてしまい、常連さんだけでなく自分のリズムとも合わなかったですね。その後、1か月お店をお休みしたのですが、今後のことをじっくりと考える機会になりました。自分のお店だから、やっぱり自分らしく楽しくいかなきゃいけないよね、と。これからも、いろんなことが起こると思います。ですが、その先には光がきっとあるはずだから。つまづいても笑顔を忘れずに復活したいな、と思います。」と、工藤さんはcafeさぶたけを必要としている方や地域の方への優しい(おも)いにあふれていました。