すみだ区報2021年3月11日号

特集

光の先へ 持続可能なすみだの未来

株式会社グリッドフレーム 墨田工場(亀沢4-16-5

「今が唯一のチャンスじゃないかな」と思います。

田中稔郎さん(代表取締役)

SOTOCHIKU(ソトチク)とは

亀沢四丁目に工場を構える株式会社グリッドフレームは、空間設計から施工までを一貫して手掛けています。昨年、製品ではない想定〝外〞の素材から構〝築〞する、という意味を持つ、SOTOCHIKUをスタートさせました。その仕組みは、まず、取り壊す前の建物から一部を建築素材として持ち主が寄付し、グリッドフレームがつくる新しい空間に使用します。すると、その売上の一部が同社が指定するNPO法人に寄付され、持ち主は寄付金控除が受けられる、というものです。「今の子どもたちは、古いものに出会う機会が減っています。それが残念です。私たちは、長い時間が経過したものと〝共に生きていく〞という感覚を取り戻していかなればいけない、と思っています。例えば、何十年も経って(こけ)が生えたコンクリートの壁を見て〝汚くなったから取り壊して新しくしなくては〞という視点ではなく、〝いい感じに古くなってるね〞というポジティブな視点を大事にしていきたい。SOTOCHIKUを通して、古いものがもつ豊かな時間を新しい空間に引き継いでいくのが、我々グリッドフレームの役目です。」と代表の田中さんは語ります。

豊かに生きるということ

昨年、大きな案件がいくつか流れるなど、新型コロナウイルス感染症の影響は少なからずあったそうです。「その分時間ができたので、社会を見つめ直すことができました。また、このような情勢でなければ、SOTOCHIKUについてじっくりと考え、進めていこうと決断するまでに至らなかったかもしれません。」と田中さんは振り返ります。

また、「世界中で変化が求められていますよね。だから私は今が唯一のチャンスなんじゃないかな、と思っています。〝豊かに生きる〞ということをより深く考え、新しい体制を作っていくチャンスです。これを逃したら、このような機会はもう二度とないのでは。私は〝コロナ禍になる前に戻りたい〞とは思っていません。元の社会を豊かだとは思ってはいないからです。そういう意味では、アフターコロナの世界をポジティブに捉えている気持ちが大きいです。」と前進し続ける姿を見せてくれました。

好きを仕事に

グリッドフレームでは、プロジェクトに関わる全スタッフが、自ら主体的に考え、楽しみながら、ものづくりを行っています。「弊社には優秀なスタッフが集まってくれているのですが、それは前提ではない。この仕事を楽しんでいて〝好き〞であれば絶対に優秀になれる。そういう考えを大事にしています。」

また、「今、子どもたちが、自分が〝好き〞と思うものを仕事にできる社会が実現し始めているようにも思えます。その社会を確かなものにするためには、大人がある程度、道を示していかないといけない。SOTOCHIKUもその一つにしていきたいですね。」と語る田中さんは、SOTOCHIKUを通して子どもたちの明るい未来を描いています。