すみだ区報2022年1月1日号

特集

新春対談 応援する中で生まれた(きずな)()かして

競技の魅力とそれぞれの道

東京2020大会を通して、お二人の競技に興味を持った方も多いと思います。競技を始めたきっかけや、競技の魅力を教えていただけますか。

三浦さん
競技をする側の魅力としては、常に記録が上がったり下がったりはしますが、記録によって自分の成長が見られることですね。パワーリフティングを始めたのは、400㎏の物が倒れてきて支えられずに背骨が折れてしまったので、逆に400㎏持ち上げられる体を作ろうという思いからでした。だから、重たい物を持ち上げるのには、普段は出し切れない力の発散とか、心の叫びというか、言葉にすることが難しいものがにじみ出る楽しさがあると感じています。

また、見る方は重さは感じられませんが、僕らの競技は意外と照明や映像、音響などで、エンターテインメント性がある試合づくりをしているんです。試合の合間には会場でBGMが流れていますが、選手がベンチ台に寝転んだ瞬間に会場が静寂に包まれる場面や、上げ終わった後、判定が成功か失敗かという場面で、緊張感を選手と一緒になって味わえるところが競技の最大の魅力だと思います。

横田さん
私は小さい頃、フィギュアスケートの浅田真央さんに憧れて、「オリンピックに出る」という夢を持つようになり、新体操を始めました。新体操は団体競技と個人競技がありますが、私は団体競技をやってきました。魅力は華麗で美しい2分半の演技でしょうか。その2分半のために毎日8時間~10時間、体を酷使しながら練習していて、本当につらくて辞めたいと思うことも実は何回もありました。でも、試合のときに、たくさんの方に「感動した」「元気になれた」と言ってもらえたり、喜んでもらえたりするのが本当に(うれ)しくて、ここまで続けることができました。

区長
私は剣道をやっていて、仕事のことなどは何も考えず、集中して相手と竹刀を交えるひとときが、私の人生には必要だと感じていますが、お二人のようにアスリートとして自分を奮い立たせて、日の丸を背負って勝負に行くというのは本当に尊敬します。お二人とも、素晴らしいなと改めて思いますね。

三浦さんは東京2020大会で出場された階級では最年長。年齢や障害に関係なく頑張る姿は素晴らしいと思います。

三浦さん
実は、東京2020大会が1年延期になった影響でスケジュールが詰まり、今年も国際大会や国内での大会が目まぐるしくあるんです。少し休みたいなという気持ちもありますが、区内を歩いていると「パラリンピックお疲れ様でした。これからも頑張ってください!」とお声掛けいただくので、応援してくれる方がいると、「まだまだやらなくちゃ!」という気持ちになりますね。

三浦さんは大会後、母校の第三吾嬬小学校や寺島中学校等で講演を行っていただきましたね。

三浦さん
講演では、パラリンピックの意義や、今後共生社会をつくるために必要なことについてお話ししました。パラ・パワーリフティングの映像とともに、ルールを説明したところ、皆さんかなり〝食い付いて〞見てくれたので、パラスポーツを知ってもらう良いきっかけになったと思います。

区長
三浦さんのような方から生の言葉が聴けるというのは、子どもたちにとって非常に大きな経験となりますし、パラスポーツや共生社会への理解につながりますね。

横田さんは競技を続ける秘訣(ひけつ)や工夫はありましたか。

横田さん
私は小学校4年生から新体操を始めて、始めるのが遅い方でした。でも、本当に負けず嫌いなので、競技経験が短いことを不利な点にしたくなくて、毎日必死に練習していましたね。その結果、オリンピックに出場するなどいろいろな経験ができました。だから、あることに夢中になるというのは、すごく大切だと思います。

横田さんは今後、次の世代に新体操の良さを伝える活動にも挑戦したいとおっしゃっていましたね。

横田さん
社会に出たいという気持ちがあったので引退する前から会社員として働いていますが、嬉しいことに、引退後も次世代の育成に力を貸してほしいなど、様々なオファーをいただいています。私が経験したことは、新体操をやっている方のうち、本当に一握りの方しか経験できない貴重なことなので、今後は仕事との両立を考えながら、可能な範囲で自分の経験を伝えていきたいと思っています。

区長
昨年解説を務められた世界選手権は、横田さんご自身が2019年に金・銀メダルを獲得されています。横田さんが浅田真央さんに憧れて始めたように、横田さんに憧れて新体操を始める子どもたちもいると思うので、ぜひ、貴重な体験を子どもたちに伝えていってほしいですね。