すみだ北斎美術館に収蔵されている北斎の名品をご紹介します。

葛飾北斎「浮絵一ノ谷合戦坂落之図(うきえいちのたにかっせんさかおとしのず)」(錦絵)

源平の争いである治承・寿永の乱の一つ「一の谷の戦い」を描いた作品です。源義経は平氏軍の背後の鵯越(ひよどりごえ)の断崖を駆け降り奇襲して、平氏軍に勝利しました。作品の右には断崖を騎馬が連なって駆け降りている様子が描写されています。作品名にある「浮絵」とは、透視図法などの西洋の遠近法を用い、奥行きを強調して描かれた浮世絵のことです。北斎は春朗と称していた若い時期に10作品以上の浮絵を発表しています。本図でも城郭は複数の消失点を使った透視図法で描かれています。

本作品は「北斎で日本史〝あの人をどう描いたか〞」展の前期（1月23日まで）で展示されています。