すみだ区報2021年10月11日号

特集

区報ジュニアレポーター 企画2 チーム下町
人とのつながり 下町ならではの温かみ「銭湯」と「保護犬と触れ合えるカフェ」

どんな人でもつながれる憩いの場 御谷湯(石原3丁目)

店主の伊藤 林さん
好きなお風呂はマッサージ風呂だそうです!

御谷湯とは

御谷湯は、昭和22年(1947年)創業、「豊かで楽しく、誇りをもてる街づくり」に協力したいという(おも)いで営業しています。この墨田区や近くの地域で、「憩いの場」「雨水の活用」「高齢者、障害者のご利用」の3つをテーマに活動しています。例えば、屋上に降った雨を床下に溜め、トイレの洗浄などに活用しています。

また、障害のある方も入れるようにという店主の想いから、平成27年(2015年)に銭湯をリニューアルしたときに「福祉型家族風呂」を取り入れる都内初の試みを実現しました。福祉型家族風呂とは、障害のある方とお世話をする人が一緒に入れるお風呂で、浴槽が2つあります。障害のある方の浴槽には回転いすがあったり、深さを調節できる板があったりするなどの工夫がされています。中には遠くから来る方もいます。1組90分、1日3組まで入れる予約制のお風呂です。

手前が障害者用の浴槽、奥がお世話をする人の浴槽。
段差がないことで車いすでも出入りしやすいです。

障害のある方とともに暮らす

御谷湯では、障害のある方と一緒に暮らせる街をつくろうと思い、バリアフリーを取り入れた銭湯を作りました。5階建てで、4・5階は男湯女湯が日替わりの銭湯です。どこにバリアフリーを取り入れているかというと、例えば全体的に段差が少なく、いろいろな所に手すりが付いています。また、エレベーターはボタンが大きく、点字があるなどの工夫がされています。

店主の伊藤さんは、数多くの福祉施設やバリアフリーを行っている施設を自分の目で確かめに行き、どうしたら利用しやすい銭湯になるか考え、リニューアルに()かしたそうです。段差をなくしたり、各所に一つひとつ手すりをつけることで、高齢の方でも不便なく使えるようにしました。「この銭湯が必要とされるように作った」と、伊藤さんは話してくれました。

洗い場にも手すりがたくさんあります。
浴槽が低いため、入浴しやすい作りになっています。

みんなに優しいお風呂ができた理由

幼い頃、家の近所に障害のある方がいたのですが、その方は障害があるということを隠して生活していました。そのとき、伊藤さんは「障害のある方と一緒に暮らせるような世の中でないとおかしい」と思ったことと、20代の頃、運転ボランティアをしているときに出会った障害のある方が「お風呂に入りたい」と言っていたことが、今のような「みんなに優しいお風呂」を作ろうと思ったきっかけになったそうです。

伊藤さんから見て、この街は「一緒に活動をする人がいる熱い街」。様々な事情で一人でお風呂に入れない方に、営業前の明るい大きなお風呂に入ってもらうボランティア活動「施浴(せよく)」を、地域活動として実施することを現在検討しています。「1日に300人ほどが利用する御谷湯は、名前は知らなくても顔見知りになれる、お風呂に入って出てくるとみんな笑顔になっている。そんな場である銭湯だからこそ、誰かの助けが必要な方も含めて人と人とがつながる場として、ここを利用してほしい」と話していました。