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企画展「東京空襲を描く人々・空襲体験者の記憶と表現」

ページID:299126433

更新日:2007年2月23日

 資料館では、平成15年度の企画展、16年度の特別展において、東京空襲体験者がご自身の空襲体験を自ら描いた絵画を募集し、その結果、集まった123人の方々の作品を両年度の展示で紹介いたしました。
 資料館に寄せられた体験画は、それぞれ体験者の重く苛酷な記憶が表現されており、絵を見る者の心を強く揺さぶるものがあります。しかし、実は、体験者の方々の絵は、これら館に寄せられた作品だけではありませんでした。こうした「人々に伝える」目的で描かれた「完成作品」とは別に、多くの方々が、「デッサン」や「下絵」など、自らの記憶を確かめ、ご自身だけの記録にする目的で絵を描いておられたのです。これらは、本来ならば人の目に触れることのない、いわば「隠れた作品」といえるものでしょう。
 「デッサン」「下絵」は、「完成作品」に比べると一見、わかりにくい表現になっています。しかし、作者自身のためだけに描かれたものであるため、それらには記憶から呼び起こされた空襲体験の強い印象が、飾らず直截的に表現されています。また「デッサン」「下絵」と「完成作品」を比較すれば、体験者だけがもつ空襲の「記憶」が第三者への伝達を目的とした「表現」にいたるまでに辿る、体験者の「心の軌跡」を推察することもできるでしょう。
 また空襲体験画の表現には、画面の隅々にいたるまで作者の意識的あるいは無意識的な心象が反映しています。絵の片隅に描かれた影やモノなど、ひとつひとつの表現に作者の鮮烈な空襲体験の記憶が込められています。「下絵」と「完成作品」の細かな描写の共通点や相違点の比較のなかから、こうした作者の「心」に寄り添い、共感していく素材を見いだしていくことができるかもしれません。
 「デッサン」「下絵」や「完成作品」など、同一の作者の多様な表現を一堂に会し比較・紹介することで、空襲体験者が記憶の中に抱える深い心の傷を知り、空襲体験をめぐる世代間の認識のギャップを少しでも埋めることができれば幸いです。
開催期間 平成19年2月10日(土曜日)から4月15日(日曜日)まで。
入館料は個人100円、団体(20人以上)80円。
中学生以下と身体障害者手帳・愛の手帳をお持ちの方は無料。
毎週月曜日(祝日のときは翌日)、第4火曜日は休館。

おもな展示資料・清水登志子作「厩橋にて」

完成作品

完成作品
清水登志子さんは、昭和20年3月10日未明、大空襲に遭遇し、猛烈な火勢のなか1人、厩橋前の「町田糸店」前に避難した。絵は清水さんが厩橋前の状況を描いたもの。

下絵

下絵
完成作品の中心にあった厩橋は、下絵では燃える家々の横にわずかに欄干が見える程度に描かれ、代わりに町田糸店(画面左横の建物)前の清水さん(画面左横のお下げ髪の女性)とその周囲の状況が中心に描かれている。清水さんにとっては、下絵に描いた、生命の危機にさらされた町田糸店前の出来事が忘れられずもっとも描きたかったことなのだが、完成作品では人々に分かりやすく伝えるために、下絵にみられる清水さんの個人的体験よりも、「厩橋前の空襲被災状況」という、より客観的な主題を構図に選んだという。

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このページはすみだ郷土文化資料館が担当しています。