葛飾 北斎は、80歳を過ぎてから4回も小布施町を訪問したとされており、岩松院の肉筆画「八方
金田 功子さん
平成元年3月、「ひいらぎ書房」を設立し、25年間「ふるさと小布施あんない 栗の
小布施を拠点とする信州の豪農豪商・高井家の四男として文化3年(1806年)に生まれた髙井 鴻山は、幼い頃から恵まれた環境で学問や芸術に親しみ、京都や江戸に遊学しました。鴻山と北斎がいつ、どこで出会ったのかについては諸説ありますが、金田さんは、鴻山が江戸を訪れたときに、小布施に本店がある日本橋の呉服商「十八屋」を介して出会ったのではないかと言います。
「墨田区では、なぜ北斎さんが小布施に行ったと言われているの?」と金田さん。「初めから絵の仕事があって小布施に来たわけではないのでは、と私は考えています。北斎さんが80代初期だった頃は、江戸は天保の
町の中心部にある髙井鴻山記念館には、北斎が鴻山を訪ねたときに2人がいろいろと相談し合った2階建ての建物があります。それは「
この「翛然楼」では、鴻山と北斎の親密な関係を感じることができます。例えば1階縁側に当たる場所。鴻山と話し終えた北斎がアトリエ「
北斎は小布施のどんなところが好きだったのでしょうか。「小布施の気候や風土はもちろん好きだったと思います。けれど、それだけではありません。北斎さんは、“小布施びと”に囲まれてとにかくゆったりすることができました。鴻山さんの面倒見の良さはもちろんですが、彼の懐の深さや穏やかな性格に、北斎さんは大きな信頼を置いていたのでしょう。鴻山さんがいなかったら、小布施にこんなたくさんの素晴らしい作品は残らなかったかもしれないですね。」
鴻山は自らも漢詩や画を書き続けました。画稿として記念館に残されている鴻山の桜や蝶、鯉などのスケッチは、塗り絵としても小布施の皆さんに親しまれています。記念館内には、幼稚園児たちが鮮やかに彩色した鴻山のスケッチが展示されています。
金田さんは、「調べるほど、どんどん鴻山さんのことが好きになり、鴻山ラブになりました。」と
友好都市である「小布施町」と「墨田区」は、農村体験や伝統工芸体験等を通して交流を深めてきました。高井 鴻山と葛飾 北斎という偉大な人物の出会いから150年余り。2人が残したものは私たちに脈々と受け継がれています。
[1]老若男女問わず多くの人が訪れる高井鴻山記念館
[2]正門左側にある高井鴻山像が人々を迎える
[3]翛然楼の2階へ続く昔ながらの階段
[4]翛然楼の2階から見た雁田山
[5]現在展示中の「世相百態図」(高井 鴻山 筆)は横349.5センチメートル、縦172センチメートルと壮大なスケール
[6]高井 鴻山が愛用した火鉢
[7]鴻山のスケッチを小布施の幼稚園児たちが個性豊かに彩色
[8]葛飾 北斎がアトリエ「碧漪軒」へ帰る際に鴻山が草履をそろえたといわれる縁側
高井鴻山記念館(長野県上高井郡小布施町大字小布施805の1) 電話:026-247-4049
「はい、どうもありがとう!」少し肌寒い4月中旬の小布施町・北斎館前にある直売所に、はつらつとした声が響き渡る。ここは「栗どっこ市」。小布施産の新鮮な果物や野菜が並び、観光客でにぎわいます。この「栗どっこ市」とは、どのようなところなのでしょうか。栗どっこ市を運営する、冨岡 一郎さんと安財 貴久男さんにお話を伺いました。
栗どっこ市(中央店)で
冨岡 一郎さん
栗どっこの代表として、栗どっこ市の誕生から第一線で活動。小布施町で、しめじを栽培しています。
安財 貴久男さん
栗どっこの会員。農業の傍ら、小布施町のまち歩きガイドも兼務し、地域の活性化に取り組んでいます。
現在、町内3か所の直売所で小布施産の果物や野菜を販売している「栗どっこ市」。その始まりは平成7年。町が一体となってまちづくりを進めるために設立した第3セクター方式の会社「ア・ラ・小布施」の事業の一つとして生まれました。「栗どっこ」の代表である冨岡 一郎さんは「栗どっこ市」の誕生当初から現在まで、その活動の第一線で活躍しています。
冨岡さんに「栗どっこ」の名前の由来を尋ねました。「“とっこ”って知らない?“切り株”のことですよ。木のとっこ。小布施の名産である栗の木のとっこを囲んで、みんなでまちづくりについて考えよう、力を合わせて頑張ろう、と当時のメンバーで考えて付けたのが栗どっこです。」
4月中旬の「栗どっこ市」には、小布施のりんごやこごみ、たらの芽など季節の果物や山菜が並びます。「小布施の気候は果物の栽培に適しているので、本当に様々な果物が並びますよ。夏場はあんず、プラム、プルーン、桃、梨。果物だけではなく、小布施の丸
町内3か所の「栗どっこ市」は、場所によって来る方も様々。北斎館前にある「栗どっこ市」は、北斎館や高井鴻山記念館がすぐそばという立地上、観光客が多くやってきます。そのため、果物類が豊富にそろっています。「むきりんご」も用意されており、「帰りのバスで食べて帰るわ。」と買って帰る方もいるとか。
一方、上町にある「栗どっこ市」は、より住宅地に近いところに位置しているため、地元の方が多く、野菜の種類が豊富なのだそうです。「毎週日曜日、お茶を飲んだり漬物を食べたり、と地域の方の
「栗どっこ」の皆さんの活動は、すみだとも深く関わっており、お二人とも、すみだのことをよくご存じです。冨岡さんは「10月から1月までは、墨田区の亀沢にある“両国北斎ふるさと市場”に、りんごや花豆なんかも出しているんですよ。すみだ北斎美術館ができる前、緑町公園でイルミネーションバザールをやっていた頃から生産物を出していたので、美術館ができるまでのことはよく知っています。」と言います。
一方、安財さんは、墨田区伝統工芸保存会の職人が毎年「技人」として小布施に実演に来ていたことを教えてくれました。「技人の皆さんは、来るたびに栗どっこ市に顔を出してくれて、店番をしていた私もよく知るようになったんですよ。いまでも交流を続けていますね。」と、すみだとの親密さを伺い知ることができます。
お二人に小布施のお勧めの場所を聞いてみました。冨岡さんは、「小布施に来たら、周辺の農村を見てほしいな、と思いますね。もちろん街の中もいいけど、少し足を伸ばして、春になると花が咲き、秋になると実をつける自然の豊かさを知ってほしい。」と話していました。
「風の会によるカントリーウォークもあるしね。毎年4月に小布施の農村を歩く催しなのですが、農家でりんごの花摘みを体験したり、畑の中で昼ごはんを食べたりなんてこともするんですよ。」と安財さんも続けます。
最後に、「まちを案内しますよ。ガイドで必ず通る道があるんです。」と安財さん。小布施のオープンガーデンや酒蔵を案内されながら北斎館までゆっくり歩くと、来る人をもてなすその温かい心に、以前からずっと知り合いだったかのような居心地の良さを感じました。
栗どっこ市(中央店)北斎館横(長野県上高井郡小布施町大字小布施811の2)
[営業時間]3月から12月までの午前9時から午後2時半まで