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すみだ区報(墨田区のお知らせ「すみだ」) 2021年1月11日号

 平成28年から始まった友好都市との紙面交換企画。今回の特集は長野県上高井郡小布施町です。新型コロナウイルス感染症の流行により交流事業が実施できない中、小布施町の方はどのような(おも)いでいるのか。まちを支える農家の方などから、小布施の農業の現状を教えていただくとともに、墨田区の皆さんへのメッセージをいただきました。
[問合せ]広報広聴担当 電話:03-5608-6223

備考1:新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、取材は電話またはオンラインで行い、写真の撮影・提供には小布施町役場の皆さんにご協力いただきました。

 町内でも数少ない栗の専業農家。東京都出身で、以前は金融機関に勤めていたが、祖父が営んでいた農家を継ぐため、10年前に小布施町へ。栗の品質が認められ、一昨年(おととし)3月に続き、昨年の秋にも、伊勢神宮の外宮奉納に選ばれる。



 「栗と北斎と花のまち」と、小布施町のキャッチフレーズにもなっている栗。栗農家を継ごうと思ったきっかけを尋ねると、「栗は、ほかの作物と比べて手がかからないと聞いていて、正直少し甘く見ていたんです。でも、実際はそんなことはなくて。」と当時の本音を教えてくれた小林さん。「私が小布施に来たとき、祖父はすでに高齢で畑に出られなかったため、技術的な部分は教わることができず、ゼロからのスタート。勉強会に参加したり、町内の栗農家さんに教わったり、県外の栗園にも赴いたりして少しずつ技術を蓄積してきました。栗はほかの作物に比べて、日光を欲しがるため、いかに実のなる枝を日光の当たる場所に置いてあげるかというのが1つのポイント。そのため、(せん)(てい)作業が肝で、1本1本枝の配置を考えながら行います。」
 これまでを振り返り、「もちろん初めは苦労もたくさんありましたが、学んでいくのはとても楽しかったです。栗って面白い作物だなあ、と。例えば、りんごなどのほかの作物は生で食べることが多いですが、栗はそうではなく、食べ方も含めて学ぶ余地があるんです。前職で全く違う畑にいた経験や視点を()かして、これからも栗を色々な角度から勉強していきたいと思います。」と小林さんは熱く語ります。

 一昨年10月に日本列島を襲った台風第19号。小布施町でも、増水した千曲川の水が堤防を越え、住宅や田畑が浸水しました。小林さんご自身は、家族とともに避難して無事でしたが、ご自宅と栗畑が浸水被害を受けました。「家の母屋が床上1m以上の浸水で、大規模半壊の認定を受けました。農器具や栗を保管していた大型冷蔵庫は全て駄目になり、畑の大半も水に()かりました。」と被害の様子を話してくれました。「行政をはじめ、周りの方々に本当に助けられましたね。所属している小布施町商工会の仲間や、日頃から付き合いのある栗菓子屋さんの方々などが連日家に来て、泥だらけになりながら畳を運び出してくれるなど、手伝ってくれました。」一時、仮住まいをしていた小林さんですが、現在はご自宅の修繕が済み、元の住居に戻っています。幸いにも、畑への土砂の堆積がそこまでひどくなかったため、昨シーズンの栗の収穫も無事終えることができたと言います。「1年で家に戻って来られて、栗も無事収穫できて、これは本当に皆さんのおかげです。感謝の一言に尽きますね。一昨年は、台風で栗を保管していた冷蔵庫が水没してしまったため、一般の方には栗を届けることができず、非常に悔しい思いをしました。皆さんのおかげで、昨年はたくさんの方に栗を届けることができて、喜びもひとしおでした。」と、再起を果たすまでの想いを聞かせてくれました。

 小林さんによると、栗はかつてより消費量が落ち、“栗離れ”が進んでいると言います。そんな現状を冷静に見つめつつ、「皆さんにとって、栗がもっと身近なものになるよう、焼き栗や蒸し栗など提供方法を工夫して、小布施から、栗の消費量を伸ばしていければ。」と語ります。また、東京から来た小林さんを受け入れてくれた小布施町への感謝の気持ちとともに「小布施という土地で、一体となって栗を盛り上げ、それによって町もさらに元気になれば。」と今後の展望を話します。
 昨年は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、様々な物産展が軒並み中止に。「墨田区の皆さんをはじめとした消費者の方々に、直接、栗をお届けできる日が来るのを切に願っています。」と小林さんは想いを伝えてくれました。

丁寧に剪定された木々が並ぶ栗畑。剪定は、収穫量を大きく左右するとりわけ大切な作業とのこと。

いがから顔をのぞかせる見事な栗。

栗は実は繊細な作物で、常温で2日・3日放置するだけで2割くらいが腐ってしまうため、収穫後も細心の注意を払って扱う。栗を選別する選果は3回にわたって行い、場合によっては、虫食いがないか、栗一つひとつをルーペで確認することも。

 小布施町出身で、農業を営みながら、農家集団「おぶせファーマーズ」の代表を務める。かつてJAで営農技術員として働いていた経験を活かし、ぶどう・りんご・桃・プルーン・ネクタリンなど、多品種の作物を手掛けている。



 様々な作物を手掛ける島田さんにその理由を尋ねると、「一番は、色々なものを作ってみたかったんです。」と明るい返事が返ってきました。ぶどうとりんごは各10種類以上、桃とプルーンは各7種類と、銘柄も豊富です。これだけの多品種を育てることができるのには、小布施の土地柄も大きく関係しているようで、「小布施は扇状地で水はけがいい。四季がはっきりしていて寒暖差もあるため、(かん)(きつ)類以外は何でもできるとまで言われています。この小布施の環境があるからこそ、様々な果物が作れるんです。」と、小布施が果樹を育てるのにとても恵まれた環境であることを教えてくれました。
 また、小布施の好きなところを伺うと、「4km近く続く春の桜並木、秋の雁田山の紅葉と、実りの果樹園。小布施では四季の移り変わりがはっきりとしていて、四季それぞれに()()らしい景色があるんです。」と島田さん。作物にとっても小布施町の皆さんにとっても、四季の移り変わりは欠かせないことのようです。

 農家が抱える課題をチームで解決しようと、3年前に町と協働で立ち上げた「おぶせファーマーズ」。栗の専業農家やりんご農家、桃農家など、様々な作物を栽培している約50人の方が参加し、先日も新メンバーが加入するなど、その輪がますます広がっています。「おぶせファーマーズでは、長野県内に加え、県外の直売所にも作物を出荷し販売しています。そのほかには、首都圏のマルシェなどに直接出向いて、お客さんの顔を見て販売しています。このような直売所やマルシェとのやりとりは、農家1人だとなかなか難しく、団体で活動することで実現しています。種類という意味でも量という意味でも、ものを集め、安定して作物を提供できるためです。1人ではできないことも、みんなで協力し合えばできる、これは非常に大きいですね。」と島田さんはおぶせファーマーズの強みを語ります。
 「新型コロナウイルス感染症の影響を受け、昨年は直売所などへの出荷はできたものの、マルシェなどへはほとんど参加できませんでした。品物だけ送って販売はできても、直接行って自分たちの顔を見せることや、消費者の方の顔を見て販売することができないのがやっぱりつらいですね。」と、いつもお客さんを第一に心掛ける島田さんは言います。「早く直接、消費者の方に作物を届けたいですね。大変な状況になってしまいましたが、これからもファーマーズのみんなで力を合わせ、墨田区の方をはじめとしたたくさんの方に美味(おい)しいものを届けていきます。」そう語る島田さんの目は明るい未来を見ていました。

たわわに実ったマスカット。「良いものを作るのは当たり前。食べる方に喜んでもらえるものを作りたい。」と、いつもお客さんのことを念頭に置き、栽培しているという島田さん。

熱心さはオンライン取材でも伝わる。もともと実家はりんご農家だが、島田さんが就農してからは栽培する品種を増やし、栽培面積も2倍近くまで増やしたとか。

 小布施町の農村地域の女性により平成8年に結成。本業である農業を営む傍ら、小布施町の魅力を発信すべく、様々な活動を行う。写真向かって左から牧 けい子さん、小林 つや子さん、内山 育子さん、島田 千恵さん、寺島 康子さん。以上のメンバーに、永井 喜美江さんを合わせた6人で活動中。



 もともと農村婦人学校の仲間で、風の会を結成する以前も農業に関する寸劇を行うなど、ともに活動していた6人。そんな中、「小布施にいい風を吹かせよう!」と内山さんが声を掛け、結成されたのが風の会だと言います。当初、「元気の出ることをしよう。」と、黒豆で納豆を作り販売したり、りんごの花の塩漬けに挑戦したりしましたが、活動が本業の農作業の一番忙しい時期と重なり、なかなか思うように活動できず、5年ほど歯がゆい時期を過ごした、と小林さんが教えてくれました。

 そんなとき、内山さんが、観光地ではなく、生活の息づく田畑や野道を歩き、農村・農業の良さを再発見する“カントリーウォーク”の話を聞き、メンバーに提案しました。「これなら私たちにもできるかもって。小布施は観光で有名になったけど、実は農業で成り立っている町。でもそれを知らない方が多いんですよね。それで、“私たちが畑に行ったときにしか見られない素晴らしい景色を、たくさんの方に見てもらおう!”ってカントリーウォークに挑戦することを決めたんです。」と小林さんは話します。カントリーウォークだけでなく、自分たちにしかできない体験も加えようと、平成13年に開催した第1回では、栽培した作物を持ち寄り、昼食を振る舞いました。それ以来、毎年春と秋に開催しています。「参加者にはリピーターが多いため、飽きないように常に新しいことに挑戦しています。墨田区の方の中にも、都市農村交流への参加をきっかけに、毎年のように来てくださる方々がいます。カントリーウォークで会うのが恒例になり、何だか親戚のようで、会うのを楽しみにしてるんです。」と語る牧さん。農業体験のほか、りんごの一生を描いた「りんごっ子物語」というオリジナルの紙芝居を作成したり、地域に伝わる民話を紙芝居にして披露したりしています。また、デザインの専門学校とコラボレーションした畑でのファッションショーや、28メートルにも及ぶ太巻き作りを行ったことも。「小布施は新しいことを始めるのを受け入れてくれる町なんです。」と、島田さんは斬新な試みができる()(けつ)を語ります。
 「本当なら、オリンピックの年ということで、昨年は“かぜリンピック”をしようと思ってたんですよ。畑で高所作業車を使った競技会をやろうって。」と、今年こそはと意気込む皆さん。風の会の新たな挑戦はこれからも続きます。

墨田区と小布施町の友好都市交流事業の一環で、3年前に行われた「都市農村交流」。りんご畑の前で、オリジナルの紙芝居「りんごっ子物語」の読み聞かせを行う。この紙芝居は参加者からのリクエストで作成することになったとか。

風の会では、毎年1人1,000本、合計6,000本の玉ねぎを植えているそう。「都市農村交流」では、玉ねぎの植え付け体験も。

このページは広報広聴担当が担当しています。