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すみだ区報(墨田区のお知らせ「すみだ」) 2021年10月11日号

 いなり寿司とのり巻きの専門店です。松むら寿司のいなり寿司は、食べたときに口の中に広がるつゆのおいしさに特徴があります。80年間継ぎ足し続けた甘くて濃い秘伝のタレを使用し、大きな羽釜で油揚げを煮込みます。この油揚げを煮上げるタイミングがとても重要で、職人の技が光ります。

明るい笑顔の店主
嶽本 信吾さん

 いなり寿司の具材は季節で異なり、夏は、さっぱりとさせるため、けしの実を使い、お彼岸頃ににんじん、れんこん、こんぶの五目いなり寿司に変わります。のり巻きにもこだわりがあります。のりは、のり巻きに合う香りの良い瀬戸内産で、かんぴょうは日本で最上級の栃木県産です。のり巻きは巻く工程が一番大事だそうです。切ったときに具材が真ん中に収まるようにするのが、職人の技の見せどころです。強く握り過ぎても、緩く握ってもうまくいかず、力加減が大切で、この技術を身に付けるためには5年から10年の修業が必要だそうです。濃くて甘い、いなり寿司に、さっぱりとした酢飯を使ったのり巻きは、お互いに良いバランスで、また食べたいなと思える、みんなに愛され続ける味になっています。

5種ののり巻き

 油揚げは、お湯で「油」を徹底的に抜くのがポイントです。そうすることで、油臭さが消え、タレが染み込みやすくなるそうです。少しの手間がおいしさを左右するのですね。

味が染み込んでおいしいいなり寿司

 長年の味を気に入った常連さんはたくさんいて、遠方から車で来るお客さんもいます。また、地域との関わりが深く、お祭りや花火大会などでは、なんと1,000人前のいなり寿司とのり巻きを出すことも。長年変わらない味を求める常連のお客さんや地域の支えがあり、お店を長く続けられているそうです。

 「味を変えずに保つことが大切だ」と、嶽本さんは教えてくれました。いなり寿司で使う秘伝のタレの味は80年前から変わっておらず、継ぎ足して作っています。味を変えないために、毎日味見することが大事だそうです。「これからも同じ味を守り続けていきたい」と、話してくれました。

昔から変わらない秘伝のタレ

 和菓子を作るうえで大事なことは、まず基本をマスターしてから、自分なりの表現を加えることだと言います。材料が少ないほど、良いものを作ることが難しいそうです。また、和菓子は手の熱で乾いてしまうため、職人には「スピード」も求められます。そして、季節の和菓子を作るには、色を()かすことが大切です。主に赤・黄・緑の3色を使用し、自然な色や味を出すために、くちなし・抹茶などの天然色素を利用することも。最近は、和菓子だけでなく、台湾カステラ風の和洋菓子も販売しています。ふわふわしていて卵の風味がよく伝わり、とてもおいしいです。

店主の酒井 哲治さん
高知県出身で、近くに自然を感じられる場所に店を開きたいという想いから、隅田川に近いこの場所にお店を開いたそうです。

 見た目がきれいで味もおいしい()(てき)な和菓子を作る店主の酒井さんですが、和菓子作りで一番苦労したことは「全部」と話すほど、和菓子職人は苦労が多い職業だと言います。
 「菓子遍路 一哲」の店名は、お客さんが求める味にたどり着きたいという「遍路」と、一から始める哲治(店主の名前)の「一哲」が由来。店名の由来のとおり、「お客さんを喜ばせるお菓子づくり」を追求されています。気持ちが詰まったおいしい和菓子をもっとたくさんの人に食べてほしいと思いました。また、アイディアが商品にならず、失敗することも多いそうです。そんな失敗があるからこそ、それを活かしてどんどんおいしい和菓子ができていくのですね。

季節感を表す色とりどりの和菓子

 開店して約1年後、お客さんから依頼があり、誕生餅の販売を始めました。お餅に名前を入れる取組もしています。今では1週間に1個のペースで売れています。お店の中には誕生餅を背負う赤ちゃんの写真がたくさん飾られていて、地域とのつながりが感じられます。

箱詰めのお菓子と壁一面の誕生餅の写真

 酒井さんは、和菓子教室をたくさん開かれています。それは、和菓子を作ることで季節感を感じてもらいたい、和菓子の歴史や和菓子職人独特の技を伝えたい、という想いからです。和菓子をもっと知ってもらいたいという酒井さんの想いが、とてもよく伝わりました。

店内に並ぶ、色とりどりのお菓子

 区内で古くから、お米一筋で営業し続けてきた「玄米耕房 かめた(亀太商店)」。創業は、江戸時代の天明2年(1782年)で当時栄えていた江戸本所で開業し、今も変わらず区内で営業しています。この場所にお店があって良かったことは、すみだの心意気を発信できること。店名にも、店主の市野澤さんのこだわりが詰まっています。よく見ると、店名の「こうぼう」の漢字は「耕房」になっています。「工房」の「工」の字にしなかったのは、周りと同じが好きではない市野澤さんが、お米は「工業」ではなく「農業」だという考えから、店名を「耕房」にしました。この店名は、とても評判がいいそうです。

店主の市野澤 利明さん
とても明るく、面白い方で、初対面でも優しく、面白く接してくれました。

 最初は6種類から始まり、今は50種類以上のお米を販売しています。お客さんの中には、毎回種類を変え、少量を買っていく常連さんもいるそうです。お米は品種によって収穫時期や味が違います。例えば、「ゆめぴりか」はお餅のようなもちもちとした“しっかり食感”を味わえます。新米の「七夕こしひかり」は、市野澤さんに教わったとおりに、お米を軽く洗って冷たい水につけて炊き、試食したところ、ねばり気がありやわらかい食感を味わえました。白米と玄米は消費期限と賞味期限はないので、白米は精米年月日、玄米は調製年月日が書いてあります。また、ブレンド米の販売はしていないそうで、「生産者が一生懸命育てたお米への想いを、買ってくれる人に伝えたいから」と言っていました。

店内には全国各地のお米が並び、自分好みのお米を選べます。

 市野澤さんは、五ツ星お米マイスター・ごはんソムリエ・おこめアドバイザーの3つの資格を持っています。五ツ星お米マイスターは、玄米を見て品種を当てる鑑定試験や炊飯技術の試験、面接もあり、取得がとても難しい資格です。「修行に終わりはない」と話す市野澤さんが印象的でした。
 元は「米屋なんて継ぎたくない」と、会社員をしていた市野澤さん。お正月やお盆に帰省し、改めてお父さんのお店を客観的に見たとき、お客さんに「おいしかったです」と、言ってもらえることがいいなと思ったそうです。それをきっかけにお店を継ぐことを決めました。今では「家業がお米屋さんでよかった」と、特にお客さんに「あのお米おいしかった」と言われたときに思うそうです。

お米マイスターはお米の博士号とも言われる資格です。

このページは広報広聴担当が担当しています。