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更新日:2026年9月14日
区内の企業経営者・人事労務担当者・テーマに関心のある方を対象に、令和8年10月施行予定のカスハラ対策義務化について法改正のポイントを確認し、対応について考えるセミナーを開催しました。
概要
開催日時
令和8年8月26日(水曜日)午後2時から3時30分まで
会場
すみだ共生社会推進センター ホール
対象者
区内企業経営者・管理職・人事労務担当者、テーマに関心のある方
参加者数
21名
講師
特定社会保険労務士、産業カウンセラー、二級キャリアコンサルティング技能士 小笠 博子 氏
講演
内容
第1部 法改正の概要と社会的背景
令和8年10月 主な改正内容
- カスタマーハラスメント対策の義務化
- 求職者等へのセクハラ対策
- パワハラ指針の見直し
なぜ今、ハラスメント対策が求められているのか
企業を守るためだけでなく、「誰もが安心して働き、暮らせる環境づくり」という視点からも、対策の重要性が高まっている。
ハラスメント対策の視点
- 企業を守る視点 法的リスクの回避、企業ブランドの保護、採用力・定着率の向上
- 働く人を守る視点 安全配慮義務のもと心身の健康を守り、安心して能力を発揮できる職場環境を実現
- 地域社会の視点 ハラスメントのない職場は、地域全体の活力と信頼につながる。
第2部 カスタマーハラスメントへの理解と対応
カスタマーハラスメントとは?
- 顧客・取引先、施設利用者等の言動で、
- 内容ややり方が度を越えていて、
- 就業環境を害するもの
単なる「クレーム」や「苦情」とは異なり、要求の内容や手段・態様が社会通念上不相当であり、働く人の就業環境を害するもの
正当なクレームとカスハラの違い
冷静で礼儀ある態度
商品・サービスへの具体的な不満
改善を求める建設的な要求
- カスハラ
人格否定や差別的言動
要求が不当・過大
手段が脅迫・暴言・長時間拘束
クレームは企業改善のヒントになるが、カスハラは働く人の権利を侵害する。
両者を正確に見極めることが、適切な対応の第一歩
カスハラを見分ける「2つのものさし」
2つの視点で総合的に考慮
1.要求の「内容」
- 要求に理由がない/商品・サービスと無関係な要求
- 契約等で想定するサービスを著しく超える要求
- 対応が著しく困難、または対応が不可能な要求
- 不当な損害賠償要求
<例>購入した商品に不良品があった。
返金・取替えの申し出→正当
限度を超える金銭要求(迷惑料等)→不当
2.要求の「手段・態様」
- 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
- 精神的な攻撃(脅迫・中傷・侮辱・暴言・土下座の強要等)
- 威圧的な言動
- 継続的、執拗な言動
- 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
<例>商品の不具合を申し出るとき
冷静に交渉を求める→正当
威圧・恫喝的な対応→不当
「内容」×「手段」の判別マトリクス

カスハラが起こる場面
- 電話 長時間の拘束、怒鳴り声、繰り返しの電話 攻撃など
- SNS・オンライン 口コミサイトへの虚偽投稿、SNSでの誹謗中傷、メールでの脅迫的な文章など
- 対面 店頭・窓口での怒鳴り・暴言、土下座の強要、長時間の居座りなど
カスハラへの初動対応
- 冷静に状況を把握する。
- 一人で抱え込まない。
- 記録を残す。
- 組織として対応する。
「断る」ことも大切な対応
- 不当な要求には、毅然とした態度で「お応えできません」と伝えることが、働く人を守ることにつながる。
カスハラに対して過度に謝罪・譲歩することは、エスカレートを招く場合がある。組織として「対応できないこと」を明確にし、担当者が一人で判断しなくて済む体制を整えることが重要
顧客対応と人権配慮のバランス
カスハラ対策は「顧客を排除する」ことではない。正当なクレームには誠実に対応しながら、不当な行為には毅然と対応する。このバランスが、顧客との信頼関係を守り、働く人の尊厳を守ることにつながる。
- 正当なクレーム 誠実・丁寧に対応し、改善につなげる。
- カスハラ 毅然と対応し、組織として担当者を守る。
第3部 パワハラ・セクハラ等の改正ポイント
パワー・ハラスメントとは?
職場において行われる、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- パワハラは以下の3要素すべてを満たすもの
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えている。
- 就業環境が害される。
パワハラの6類型
代表例をあげているが、これら以外はパワーハラスメントではないということではない。
- 身体的な攻撃 殴打、足蹴りを行う。相手に物を投げつける。
- 精神的な攻撃 人格を否定するような言動を行う。長時間にわたって、業務に関する厳しい叱責を繰り返し行う。
- 人間関係からの切り離し 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる。
- 過大な要求 業務とは明らかに不要なことや遂行不可能なことを押しつけたり、仕事の妨害をしたりする。
- 過小な要求 管理職でもある労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる。
- 個の侵害 職場外での継続的な監視や、性的指向等の機微な情報の暴露(アウティング)
改正指針で追加される内容
- 自爆営業の強要 従業員に自社商品・サービスを購入させる行為がパワハラとして明確化
- カミングアウトの強要・禁止 SOGI(性的指向・ジェンダーアイデンティティ)に関する侮辱やアウティングは従来から対象。今回、開示の強要・禁止が加わる。
※SOGIに関する侮辱やアウティングは、顧客等から受けた場合も対象
セクハラ防止、"就活セクハラ"まで拡大
求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ) 事業主が雇用する労働者による「性的な言動」により求職者等による求職活動等が阻害されるもの
- 誰に? 就活生・インターン生・実習生など、まだ社員ではない人
- どこで? 対面もオンラインもSNSも。社外での面談も
- 何を? 方針とルールを決め、社員と求職者の"両方"に周知
男性も女性も、加害者にも被害者にもなり得る。異性間だけでなく同性間も、相手の性的指向・ジェンダーアイデンティティにかかわらず該当し得る。
SNS・オンライン上での注意点
- 業務用チャット・メール 文字に残るため、言葉の選び方に注意が必要。感情的な表現は避ける。
- オンライン会議 対面と同様にハラスメントは成立する。発言・態度に注意が必要
- プライベートSNS 業務外であっても、職場関係者への誹謗中傷はハラスメントに該当する場合がある。
※「悪気はなかった」では済まないケースも ハラスメントかどうかは、行為者の意図ではなく、言動の内容や状況から客観的に判断される(基準は「平均的な労働者の感じ方」)。「そんなつもりじゃなかった」は免責理由にならない。
第4部 今からできること
企業・組織として取り組むこと(1)
- 方針の明確化 ハラスメントを許さないという経営トップのメッセージを明文化し、全従業員に周知する。
- 相談窓口の整備 社内・社外の相談窓口を設置し、相談しやすい環境を整える。匿名相談の仕組みも有効
- 管理職・従業員への周知 定期的な研修・セミナーを実施し、全員がハラスメントについて正しく理解できるようにする。
企業・組織として取り組むこと(2)
- 初動対応の明確化 ハラスメントの相談・申告があった際の対応手順をマニュアル化し、迅速に動ける体制を整える。
- 情報共有と再発防止 事案の内容(個人情報に配慮しつつ)を組織内で共有し、同様の問題が繰り返されないよう対策を講じる。
- カスハラ対応方針の策定 対応方針とあわせて「特に悪質な場合 にどう対処するか」を事前に定めておくことも義務の中身である。
※自社が「する側」になることも(他の事業主への協力) 取引先等から事実確認等の協力を求められたら、応じるよう努める義務がある。協力を求められたことを理由に契約を解除する、協力した従業員を不利益に扱う、といった対応は望ましくない。
相談窓口の整備チェックリスト
- 相談窓口の担当者が決まっている。
- 相談窓口が全従業員に周知されている。
- 匿名での相談が可能な仕組みがある。
- 相談内容の秘密が守られる体制がある。
- 相談後の対応フローが明確になっている。
- 外部相談窓口(社労士・弁護士等)と連携している。
働く人として:一人で抱え込まない
ハラスメントを受けたとき、「自分が悪いのかも」「大げさかも」と思って一人で抱え込む方が多くいます。しかし、ハラスメントはあなたのせいではありません。まず信頼できる人に話すことが、解決への第一歩です。
相談先を知っておく
■社内相談窓口
- 人事・労務担当者
- 上司(加害者でない場合)
- 社内ハラスメント相談窓口
■社外相談窓口
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
- 総合労働相談コーナー
- 東京都カスタマーハラスメント総合相談窓口
- 東京都ろうどう110番
■専門機関
- 法テラス(法律相談)
- 産業カウンセラー
- メンタルヘルス相談機関
記録を残すことの重要性
- 日時・場所を記録する いつ、どこで起きたかを具体的に記録する。
- 言動の内容を記録する 何を言われたか・されたかを、できるだけ正確に書き留める。
- 証拠を保存する メール・チャット・録音など、客観的な証拠を保存する。
- 目撃者を確認する その場にいた人の名前も記録しておくと後の対応に役立つ。
記録の残し方 実践ポイント
■記録に含めること
- 日時・場所・状況
- 発言・行動の具体的内容
- 自分の感情・体調への影響
- 目撃者の有無
- その後の対応・経過
■記録の保存方法
- 手書きのメモ(日付入り)
- スマートフォンのメモアプリ
- メール・チャットのスクリーンショット
- 録音(自分が当事者の会話は原則OK)
お互いを尊重したコミュニケーション
ハラスメント防止の根本は、お互いの人格・尊厳を尊重すること
アサーティブ・コミュニケーション
自分の気持ちや意見を、相手を尊重しながら率直に伝えるコミュニケーションスタイル
- 攻撃的(アグレッシブ)自分の意見を押しつけ、相手を傷つける→ハラスメントにつながりやすい。
- 非主張的(パッシブ)自分の気持ちを抑え込む→ストレスが蓄積し、被害を受けやすくなる。
- アサーティブ(理想)自分も相手も尊重しながら、率直に伝える→健全な職場関係を築く。
管理職の役割
- 職場環境の整備 ハラスメントが起きにくい職場風土をつくるのは管理職の重要な役割
- 相談を受け止める 部下からの相談を真剣に受け止め、適切な対応につなげることが求められる。
- 部下を守る カスハラ等の外部からのハラスメントに対しても、部下を守る姿勢を示すことが大切
ハラスメントを見たとき(第三者として)
ハラスメントの場面を目撃したとき、「自分には関係ない」と傍観することは、ハラスメントを黙認することになる。第三者としてできることから行動することが、職場全体を守ることにつながる。
- その場で声をかける(安全な範囲で)
- 後で被害者に声をかけ、話を聞く。
- 上司・相談窓口に報告する。
ハラスメント防止の法的義務 まとめ
| 種類 | 義務の内容 | 対象 |
|---|---|---|
| パワハラ | 防止措置義務(全企業) | 全労働者 |
| セクハラ | 防止措置義務(全企業) | 全労働者+求職者等※(改正後) |
| マタハラ・パタハラ | 防止措置義務(全企業) | 全労働者 |
| カスハラ | 防止措置義務(令和8年10月から) | 全労働者 |
※求職者等には応募者・インターン生・実習生等が含まれる。
令和8年10月までに企業が準備すること
- 方針策定
- 窓口整備
- 研修実施
- 周知徹底
よくある質問
Q. 小規模な事業所でも義務化の対象か?
A. カスハラ対策義務化は企業規模を問わず全事業主が対象となる。規模に応じた対応が求められる。
Q. 相談を受けたとき、どこまで対応すればよいか?
A. まず相談者の話をしっかり聞き、事実確認を行う。その後、就業規則・対応マニュアルに沿って対処し、必要に応じて専門家に相談する。
Q. 加害者への対応はどうすればよいか?
A. 事実確認後、行為者への注意・指導を行う。懲戒処分は就業規則に定めがあることが前提である。再発防止の研修受講も有効である。
ハラスメントのない職場が生み出すもの
- 生産性向上 ↑
- 採用力強化 ↑
- 離職率低下 ↓
本日のまとめ
- 令和8年10月、カスハラ対策が義務化
- カスハラは「クレーム」とは違う。
- 「悪気がなかった」は免責にならない。
- 一人で抱え込まず、相談・記録を
明日からできること
■企業・組織として
- カスハラ対応方針を策定・見直す。
- 相談窓口の周知を徹底する。
- 管理職研修を計画する。
- 対応マニュアルを整備する。
■働く人として
- 相談窓口の場所を確認する。
- 気になることは記録しておく。
- 困ったら一人で抱え込まない。
- お互いを尊重した言葉を使う。
セミナー風景


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このページはすみだ人権同和・男女共同参画事務所が担当しています。
