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漆、うるわし、古代からのロマン 漆工博物館

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更新日:2021年3月12日

本日はすみだ3M運動「小さな博物館」の1つ、「漆工博物館」の館長で、「すみだマイスター」でもある安宅(あたか) 信太郎さんにお話を伺いました。

漆工博物館は東京スカイツリーの近く、押上駅から徒歩5分の場所にあります。外観は一見すると普通の民家ですが、中に入ると壁には漆塗りが施され、江戸時代から現代までの漆塗りの品々や製作道具・材料・製作工程、これまで安宅さんが手掛けてきた修理・修復の写真等の展示を落ち着いて見ることができます。


壁に漆塗りが施され、落ち着いた空間が広がっています


漆塗りの品々が並んでいます

安宅さんは、主に建築に関する漆工、修理・修復を手掛けており、現在は著名な寺院(長野県善光寺、成田山新勝寺など)や著名な私邸(衆議院議長公邸、竹久夢二記念館特別室など)の仕事をされ、ホテル雅叙園東京(旧 目黒雅叙園)の「百段階段(東京都指定有形文化財)」などの修理・修復にも携わっています。


作業中の安宅さん

漆は時の経過とともに鮮やかな色彩が浮かび上がってくるそうです。漆は温度や湿度に大きく影響され、温度20℃、湿度70%の状態が、一番適しているとされています。最終的に自分が出したい色をイメージし、その日の温度、湿度によって、漆の調整をします。

漆工職人は、塗師屋(ぬしや)と呼ばれるそうですが、あくまでも塗師屋は影、主役は漆で、漆の良さを引き出すことが塗師屋の仕事だと、安宅さん。漆にはほかの塗料には出せない、ツヤ、重厚さ、堅牢さがあり、基本的には、色のつくり方や塗り方は古代からほとんど変わっていません。縄文時代に作られたとされる朱の漆器は時を超えてもなお色褪せず、麗しさを保ち、古代からのロマンを伝えてくれます。


ヘラや刷毛で漆を塗ります

建築に関する漆工職人は、現在、東京都で2軒ほどだと言います。後継者が少なくなり、漆の良さを伝える人がいなくなっている現在、安宅さんは外弟子を取るなど、人材育成にも取り組んでいらっしゃいます。後進を育てるコツは、弟子の失敗は全部抱えるつもりで向き合うことだと教えてくれました。
さらに、若い世代にも漆の良さを伝えるため、建築漆工だけではなく、デザイナーとのコラボを積極的に行ったり、「すみだモダン ブランド認証事業」でも認証を受けているマグカップや和紙コースターなど新しい商品つくりも行っています。現状に満足したら、そこで終わり。売れるものをつくるのではなく、漆の良さを伝えるため、新しいものに挑戦し続けていく。そうおっしゃっていました。


本漆し塗りマグカップ(すみだモダン2014ブランド認証商品)

また、漆工博物館では、主に小中学生向けに蒔絵体験を行っています。花瓶に自分が描きたい絵を自由に描いてもらい、ものづくりの楽しさや伝統工芸の良さを若い世代にしっかりと伝え、知ってもらう。そのためには、人数がどんなに少なくても体験を受け入れ、文化的な価値を墨田区に残していきたいとおっしゃっていました。
現在、博物館は奥様とお2人で対応されています。将来的に仕事が落ち着いたら、気軽に来館することが出来、いつでも職人と会話が出来、本物に触れられる、そんな場にしたいと安宅さんは夢を語ってくれました。


蒔絵体験の花瓶


笑顔がステキな安宅さんご夫婦

父親の下、16歳から職人の道を選び、それと同時に定時制高校に通われ、様々な苦労もされたそうです。それでも、伝統的な技術を用いながら、チャレンジ精神をもって、新たな取り組みを続けていく安宅さん。
「俺が漆を選んだのではなく、漆が俺を選んでくれた。」そう語る安宅さんからは、漆への感謝と職人の心意気、時間が経つほどに一層鮮やかになっていく心の輝きを見ることが出来ました。

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