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講演会「ジェンダー平等時代に生きる君たちへ”子育て中のジェンダーバイアス”」を開催しました

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更新日:2023年6月8日

さらなる男女共同参画と多様な性の尊重を推進するため、4月から「墨田区女性と男性及び多様な性の共同参画基本条例」が施行されました。
改正条例の周知を目的に、生きづらさの要因になりやすい性別役割分担意識などについて考える機会として講演会を実施しました。

実施日時

令和5年5月27日(土曜日)午前10時から正午まで

会場

すみだ女性センター3階 ホール

参加者数

25人

講演内容


講演会の様子

講師 弁護士 太田 啓子 氏
著書 「これからの男の子たちへ「男らしさ」から自由になるためのレッスン」(大月書店) 
   「憲法カフェへようこそ」(共著、かもがわ出版)「これでわかった!超訳特定秘密保護法」(共著、岩波書店)
   二児の母

著書に込めた願い

 自分が子育てエッセイ「これからの男の子たちへ「男らしさ」から自由になるためのレッスン」(大月書店) を出したところ、非常に話題になった。執筆にあたっては、性差別を無くすために、子ども時代からの教育が必須ではないかという思いと、特に男の子に性差別・性暴力についてどう教えるかが重要と考えた。
 この本に込めたメッセージは、「らしさ」の呪い・ジェンダーバイアスから自由に生きてほしいということ。そして、性差別の構造がある今の社会において、「男性」というマジョリティの特権をもっていることを自覚し、マジョリティとして性差別・性暴力に積極的に抗ってほしいということ。

仕事柄感じること

 弁護士という仕事柄、離婚事案やハラスメント・性暴力事案を扱うことが多い。その中で感じるのは、女性との対等な関係を嫌がる夫達の多さと、社会全体の性差別構造のひどさである。特に男女経済力格差があり、男性に経済的に依存しないと生活できない状況が構造的にあるということだ。ハラスメント・性暴力事案では、「恋愛」のつもりでセクハラしている加害者や、「セックス」のつもりでレイプしている加害者が多い。DV・モラハラ夫の特徴は、驚くほど類似している。

データから読み解く日本の現状

・日本のジェンダーギャップ指数(116位/146か国)(2022年)・男女間賃金格差(令和4年男女共同参画白書)等

子育ての中で

 子どもを育てる中で、改めて感じたことがある。まず、「男子ってバカだよね」問題。女の子が乱暴な行動をすると怒られるが、男の子の場合は「男の子あるある」で済まされてしまう。「カンチョー放置」問題は、スカートめくり等とともに性暴力の矮小化となる。また、「男子は好きな女子に意地悪しちゃうもの」言説も、暴力を見えづらくする危うさがある。そういう方法では好意は伝わらないし、かえって嫌われても仕方ないと伝えるべきである。親から子への性差別もある。例えば、学校の三者面談で、母親が先生に、「姉が良い学校に行っているから弟はそれ以上の学校でないと示しがつかない」と話すことがあるらしい。兄が良い学校でも、妹は同じことを言われない。
 「日本の子どもにおける知的能力に関するジェンダーステレオタイプ」(大神田ら共同研究グループ)によると、子どもは、4 歳頃から「女性=優しい」というステレオタイプが一貫して見られる。7 歳頃からは「男性=賢い」というステレオタイプがみられる可能性を示している。

教育の場では

 海外の主要な大学に比べ、東大の女子学生比率は非常に低い。東大は危機感を持って女子学生を増やす活動をしているが、家族、学校、社会といった周りの考えや価値観が相当影響していると考えられる。男女の行動や思考の違いは脳の性差によるかのように説かれている人もいるが、四本(よつもと)東京大学教授は「男女の行動の差は生得的な脳により、解消できない」という考えを招く恐れがあると警鐘を鳴らしている。。
 米国の心理学者が提唱した「Toxic Masuculinity」とは、単に「有害な男らしさ」のことではなく、「自他を害する過剰な男らしさへの執着」であると、伊藤公雄大阪大学名誉教授は指摘した。「男らしさ」を期待する言葉の裏には「女だったらそうでなくていいけれども」という、女性蔑視のメッセージが隠されている。「男らしく生きる」ことを目指せば目指すほど「女性を軽視する生き方になってしまいかねない」とのこと。
 NPO法人SEAN「ジェンダーと暴力」人権教育実践報告書によると、暴力を受けたときの高校生の対応は、女子は、1位「誰かに話をきいてもらう」、2位「相談する」、3位「相手と話し合う」であったのに対し、男子は1位「やり返す」、2位「誰かに話をきいてもらう」、3位「がまんする」と違う傾向が出ている。
 ホモソーシャルなノリというものがあるように思う。先程の伊藤先生は「男性学入門」の中で、「男性たちの多くは、自覚的か否かに関わらず、つねに「自分が男である」ということへの自己証明へのこだわりに縛られていると指摘されている。また、男性は尊重されているのかということも教育し、考えさせていく必要がある。

マジョリティには開く自動ドア

 出口真紀子上智大学教授によると、特権とは自動ドアのようなものであり、社会のマジョリティに対しては開きやすいしくみになっている。しかし、マイノリティに対してその自動ドアは開かないことが多い。そのためマイノリティはドアの存在を認識できるが、マジョリティ側は自動ドアの存在すら見えない。マジョリティ側は自分に特権があるとは思わず、こうした状況が「当たり前」「ふつう」だと思って生きている。あらゆる差別問題は、自分がマジョリティ側である時ほど、その問題が見えづらいという自覚が必要である。子どもに「マジョリティの特権」を教える本として、「女の子だから、男の子だからをなくす本」(ユン・ウンジュ著 イ・ヘジョン絵 ソ・ハンソル監修 すんみ訳)がある。この本は、「あなたはどちらがわにいるかを知ろう」「明るいところにいると、くらいところはよく見えない。反対に、くらいところからは明るいところはよく見える。明るくて、大きくて、強いがわに立っていると、くらくて、小さくて、弱いほうがどんなことになっているか見えづらいんだ。」というメッセージを送っている。

質疑応答

Q ジェンダー平等を実現するために、自治体やコミュニティレベルでの取組の成功例があれば教えてほしい。子どもが小学生となり、色々な場面でジェンダーバイアスを植え付けられる機会が増えた。人の意識を変える難しさを感じている。
A 議員や組長など女性が増えてはいるが、首長が女性となった杉並区は「熱い」と思う。ありきたりだが、地道に意思決定する女性を増やすことかと思う。

Q 進学にあたって、男子校や女子校は、思春期でも勉強に集中できると聞く。子供にその良さを伝えるにはどうしたらいいか。
A もし娘がいたら、女子校は選択肢にするだろう。女子校出身者の話を聞くと、女子校では「女子はこうしなくては」という縛りを意識せず過ごしやすいように感じる。男子校にも同様のことはいえ、男子校の良さもあるのだろう。思春期の一時期に性別役割分担を意識せず過ごせるのはどの性別にとっても良いと思う。ただし、男子校はホモソーシャル的なノリを養成してしまう罠もあり、それに注意が必要だと感じる。性差別が強い社会の中では、男子校にこそジェンダー教育が重要。勉強への集中というのはあまり女子校男子校共学には関係ないように思う

Q SNS等では違う意見は叩き潰す。対面では「意識が高いよね」「価値観が違うよね」などの発言や、空気を読むなどで、議論が進まないことがあると感じている。ぼくらは誰も傷つけたくないというのは、傷つけられたくないということかと思う。自分の学生時代は意見が違っても言い合えた。法的には進んでいるが、価値観はどうかと思う。
A 差別も多様化というか、詭弁に違和感があったりはする。「ぼくらは誰も傷つけたくない」というのは、自分でも気付かないうちに加害性が内包されるのではないかということに自覚的でありたいという意味だと聞いている。

参加者からの感想

  • ずっとこういう講演が聞きたかったので実りある一日でした。
  • 平等(男女)な目線での講演でした。
  • 本も読ませていただきましたが、数字などであらためて勉強になった。
  • 子供への声掛けの方法で、あらためて見直そうと思った。
  • 家に戻りまた記憶をよみおこして子育てに参考にしていきます。
  • 意識せずにジェンダーバイアスを持っていた。
  • もう少し自分自身の勉強が必要かと思った。
  • ジェンダー以外にもマジョリティ側と、そうでないかについても考える。
  • 男であるべきという部分から解放を。次の世代に大切なことを子たちに伝えていく。
  • もっと身近な人たちとジェンダーについて話したい。

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このページは人権同和・男女共同参画課が担当しています。

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