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更新日:2025年7月1日
取材日:2021年11月18日
居酒屋・カラオケボックス・カフェなどに希釈飲料を提供
スミダ飲料株式会社は、各種の果実飲料やシロップ、ゼリーの製造・販売を行う業務用清涼飲料水の専門メーカーです。 登記上の創業は1947年ですが、実際は明治後期か大正初期にラムネの製造販売を開始したと推定されています。日本の清涼飲料水の歴史はラムネの製造が始まった明治中期に始まるとされていますが、1923年に起こった関東大震災発生時、ラムネの瓶を洗浄していた話を、阿部豊社長は祖母から聞かされたそうです。 戦時中に事業を中断し、戦後はシロップ・果汁飲料に転換し、地域の一般消費者を対象に地元の商店などと取引を続けていました。1970年当時、喫茶店文化華やかなりし頃、コーヒーの焙煎問屋や食品問屋をターゲットとして、オレンジジュースやレモンスカッシュ、ソーダ水といった希釈用原液の販売を開始し、業務用に転換。この業務用への転換が、飛躍へのきっかけとなったのです。 そして決定的なターニングポイントとなったのは、平成に突入する頃、居酒屋やカラオケボックスにチューハイの原液(シロップ)を納入できるようになったこと。当時、大手の居酒屋チェーン店が勃興し、若者や女性客をも取り込んで成長していました。フルーティーな酎ハイやカクテルなどはこうした客層に受け、居酒屋・カラオケブームにマッチしたのです。居酒屋・カラオケ業界との取引を機に、業績は急上昇していくこととなりました。 数百種類に及ぶスミダ飲料の商品は、シロップやコンクなどと呼称されるカクテルや酎ハイ、ハイボール、ソフトドリンクなどの素であり、通常、5~6倍に希釈して使用することを想定し、製造されています。
スミダ飲料のモノづくりを支える3つのポイント
多品種少量生産
競合大手にまねのできない多品種少量生産への対応が武器の一つです。定番のカタログ掲載商品に加え、季節限定品、取引先ごとのオーダーメイド商品など、その数は数百種類に及びます。
素材へのこだわり
多品種展開の一つの戦略として、日本全国から各地の名物を仕入れて、商品化。鹿児島県徳之島の島みかん、岩手県の山ぶどうをはじめとする国産果汁アイテムが30数種類あります。
耐熱性紙パックでエコ仕様
高温加熱殺菌に耐えられる五層仕立ての耐熱性紙パックを使用。脱プラスチック、持続可能な社会づくりという視点からも、紙パックの使用は地球環境にも奏功しています。
中小ならではの強みを生かしたフットワーク、商品展開
現在、スミダ飲料の商品が使用されている業界は、居酒屋が約4割、残りの半数がカラオケボックス、カフェ、ファストフードなどです。平成期はおおむね順調に業績を伸ばし、2009年には茨城県土浦市に新工場を建設し、2018年には本社新社屋を完成させました。 こうした躍進を実現できたのは、中小企業ならではのフットワークの良いモノづくりで顧客の信頼を獲得できたから。オーダーメイド商品の開発依頼に対しては、1週間程度で試作品の提案が可能。「とにかくスピードが重要。提案が遅れれば、競合他社に勝てません」と阿部社長は断言しています。 フットワークときめ細やかな対応を得意とする開発担当部署が、スミダ飲料の多品種少量展開を支えてきました。また、地元でしか入手できない国産果汁素材をラインナップできるのは、日本全国に張り巡らしたネットワークが決め手となっているからです。こうした商品展開は、使用素材にこだわりを持つ、あるいは自然志向の消費者の需要に応え、居酒屋の販促戦略にも合致しています。
コロナ禍対策として個人ユーザー向けに自社ブランドを展開
スミダ飲料にとって、2020年からのコロナ禍は大きな打撃となりました。緊急事態宣言などもあり、スミダ飲料の商品を使用する居酒屋やカラオケボックスでは営業もままならない状況が続いています。 こうした中、2021年7月、新規事業として一般消費者をターゲットとする自社ブランド商品、「お家ドリンクバー専門店 吾妻橋ベバレジ」シリーズの通販展開をスタートしました。 第一弾ラインナップとして、コーラ、メロン、ジンジャーの3種類を用意。お好みで自由自在に本格的なアレンジができるドリンクベース(希釈飲料)であることを切り口とし、定番のソフトドリンクやクリームソーダはもちろん、スイーツやアルコールと合わせることも可能です。こうした特性をポイントに、「お家ドリンクバー」というスローガンを掲げ、「飲み物を楽しく」「ご自宅で家族と楽しめる」をコンセプトとしています。 個人をターゲットにした通販展開という販売方法であるゆえ、InstagramやTwitterなどのSNSによる宣伝展開に力を入れています。 「個人消費者の市場に希釈飲料の認知度を広げることが第一のポイント。そのため、吾妻橋ベバレジが展開するドリンクベースの美しい液色を基調としたアレンジの仕方をアピールし、『自分もこんなドリンクをつくってみたい』と思っていただけるよう、マーケティング戦略を中心に展開中です」と同商品の販売推進を担当するブランドディレクターの高橋善希さん(「高」は「はしご高」)は話しています。 今後、シリーズの種類を増やし、期間限定のポップアップ店舗の創出、親子創作ドリンク教室の開催などといった販促展開も考案中だといいます。
業務用市場の回復と新規事業への挑戦が今後のカギ
一方、阿部社長は「とにかく、いまはコロナ禍の収束後、できるだけ早く以前の状況に近づけられるよう努力したい。激減した売上を取り戻すことが最優先課題」と語っています。 しかしながら、コロナ禍によって人々のライフスタイルが変わってしまったため、「居酒屋やカラオケボックスなどに、これまでと同様に人流は戻り切らないだろう」とも予測している阿部社長。 もちろん、業務用を主流とする展開は今後も変わりません。とはいえ人々のライフスタイルの変化を睨んだ、吾妻橋ベバレジの試みは、個人ユーザーへの需要喚起を意図したものとなっています。多品種少量生産を得意としてきたスミダ飲料の一般消費者向け自社ブランドの展開は、要注目と言えるでしょう。
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企業情報
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電話番号 | 03-3624-1741 |
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