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更新日:2025年7月1日
取材日:2023年10月26日
革の卸から加工を行う会社へ成長
代表取締役社長の渡邊守夫さん
T.M.Y'sは動物の皮を革へ加工する工程の中で、革を伸ばしたり、厚みを調整したりする作業が済んだ乾いた革へ染色と箔・フィルム加工などを行っている染色事業者です。扱っている革の種類は主にシープ(山羊)やラム(羊)などの小型な革から馬、牛、バッファローなどの大型な革です。元々は1923年に墨区本所にて革の卸問屋からスタートし、60年前に葛飾区堀切、そして2006年に墨田区東墨田へと移って来ました。その際にT.M.Y'sを設立し、社名は立ち上げメンバーである三代目代表取締役社長の渡邊守夫氏を含む三兄弟の名前(Teruaki、Morio、Yoshiji)の頭文字を使用しました。2020年には現在の新社屋「LEATHER LAB TOKYO」がオープンしました。工場としての機能を持つだけでなく、社会科見 学への対応やワークショップを行うほか、200色を越える多彩なシープのスエード革などのショールームと荒川に臨むラウンジが設置されており、社外の方との接点となる機能を兼ね備えています。
業界に求められる変化への対応
新社屋ではシンボルカラーが映える浄水槽が迎えてくれます。これは染色工程の排水を浄水と汚泥に分ける機能を備えています。各フロアは安全のために動線や機械の配置がイラストで表示されているだけでなく、各種機械設備は全て安全装置を備えています。「サスティナブルとかSDGsを意識するだけでなく、『LWG認証』を得ないとこの先の生き残りは難しい」と、渡邊代表取締役社長は動線や機械のイラストと安全装置を備えた理由を語ります。LWG(Leather Working Group)とは2005年に設立されたレザー業界の環境保護団体です。この団体による「LWG認証」は、レザーの生産工程において使用する薬剤の安全性や水処理などの環境対策を審査し、厳格な国際基準に準拠した製革業者にのみ与えられる認証です。渡邊代表取締役社長は、日本国内のスポーツメーカーや百貨店でも、世界的ハイブランドと同様に「LWG認証」を取得していないと取引ができなくなるのではと予想しています。この認証を得るためには、排水の水質などの革染色に関する一定期間のデータが必要ですが、ビジネス上の後手に回ることがないように、地道なデータ収集を行っています。
レザーラボトーキョーの外観
高度な技術と機械設備、工場環境の融合
LWG認証を目指す工場
LWG認証を満たす水準の向上の設備と環境
LWG認証を取得するためには、多額の設備投資が必要 となります。同社では工場を建て替えて認証取得に 臨んでいます。
8~10時間掛けて行う革の染色工程
革と液体とをかき混ぜるタイコ(ドラム)
染め上がるまでに薬品を40回程度も投入するなど、様々な工程がある。仕上がって乾いた際に、目指すイメージどおりの色や柔らかさ、風合い、味わいを出すには熟練の技術を必要とする。
革の表情や風合いに変化を与える加工技術
機械での箔押し作業の様子
3,000種類を超える色や柄から箔やフィルムを選び、 熱で革に圧着させるラミネート加工や艶出し、柔らかさ を変えるバイブレーション加工が出来る。
デザイナーとつながる場所
コロナ禍以降、テレワークの普及により靴や服の販売は減少するなど、ファッション産業を取り巻く需要の変化に渡邊代表取締役社長は危機感を抱いています。追い打ちをかけるように、工場で使用する電気、ガス、水道、薬品コストの上昇が利益を圧迫します。こうした環境の変化の中、ショールームやラウンジなど人と繋がる場所としての機能を備えたレザーラボトーキョーには、デザイナーが訪れることが増えたそうです。それらをきっかけとして、様々なブランドとのコラボレーションを積極的に行っています。革ジャンパーを中心としたメンズブランド「 STRUM(外部サイト)(ストラム)」や、オーダーメイドでレザージャケットをお仕立てするレザーテーラー「
No,No,Yes!(外部サイト)(ノーノ―イエス)」には、各デザイナーが色や質感にこだわった革素材を提供してい ます。また、オリジナルブランド靴の製造販売を行っている「
clanque(外部サイト)(クランク)」や、優れた日本の職人をプロデュースするオーダーメイドブランド「
BLASON(外部サイト)(ブラゾン)」とは企画から参画しての製品開発を行っています。
200色以上の豊富なシープスキン
自社ブランドへの取り組み
ラムスキンライダースのサンプル
コロナ禍での環境の変化により、渡邊代表取締役社長は自社ブランドへの取り組みを始めました。工業用インクジェットプリンターで平面の革に直接印刷を行い、それを靴にしてニューヨークの展示会に出品しました。その取り組みを通して製造工程や在庫の課題整理ができたため、少ない型で出来るセミオーダーの洋服や財布を販売することを計画し始めました。なぜ洋服なのですかと伺うと渡邊代表取締役社長は「元々ファッションが好きで、学生の時でも自身が身につける革を加工してもらったりしていた。特に洋服好きだから、オンリーワンの趣味性が高く、遊びが強いブランドを作りたい」と新たな取り組みについて、嬉しそうに話してくれました。レザーラボトーキョーのショールームには既にサンプルが展示されており、受注体制も出来ています。200色の豊富なシープスキンの在庫から自分だけの色を組み合わせられるだけでなく、世界で最高峰のスペインのラム革などが揃っています。色だけでなく、革の種類も選べるのは革染色事業者だからこそできる強みです。セミオーダーのため出来上がりまで2ヶ月ほど要しますが、革の種類や色を自ら選んで作るこだわりの一着だからこそ長く愛着を持てる物を手に入れることが出来ます。
革を好きな人たちが集う場所を広げたい
革の研究に熱を注ぐ革染色事業者との出会いの場であるレザーラボトーキョーでは、200色のシープスキン在庫を見て触ることができるだけでなく、色や革の硬さの調整を行う高い技術力や造り手の思いに触れることが出来る場所です。こうした革染色について知ってもらおうと、T.M.Y'sでは子ども向けの工場見学を定期的に開催しています。子どもだけでなく、一緒に参加した大人までもが、工場にある機械の大きさや数々の工程に驚いている様子をみると、当たり前にしてきたことが、ほかではあまり知られていないのだと、発見があるそうです。今後は、セミオーダーが出来るショップ「LLT Order & FittingStore」を翌年4月に、錦糸町駅近くにオープンさせ、革染色事業者だからこそ伝えられることを発信ていくそうです。「革を本当に欲しい人が手にとってくれることに喜びを感じる!」と、渡邊代表取締役は嬉しそうに話してくれました。
ラウンジの革製サインボード
動画
企業情報
住所 | 墨田区東墨田三丁目14番21号 |
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電話番号 | 03-5630-8189 |
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