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更新日:2025年7月1日
取材日:2023年8月29日
大学院生から突然の代表就任
代表の大久保潤哉さん
TOMOSU FURNITUREは、建築会社から電気工事の仕事を請け負う株式会社DaikiConnect(千葉県流山市)の家具事業部の工房です。現代表の大久保潤哉さんが大学3年生の時に、元代表のお父様がご逝去され、お母様が会社を引き継ぎました。大久保代表は美容の世界に興味があり、既にそちらの内定も決まっていましたが、これまで経営に携わってこなかった未知の世界に、急にお母様が代表として就くことは大変なので、内定を辞して電気工事の現場仕事を手伝うようになりました。大学に通いながら期せずして電気工事業界に飛び込む事となります。そんな中でゼミの教授の勧めと職人さんたちの後押しもあり、マーケティングを学ぶために大学院へ進学しました。ところが大学院2年生になる際にお母様から代表を退きたいと相談を受けました。一方で、職人さんたちには続けたいという意志があったため、お母様からの意志を継ぎ、大久保代表は休学をして代表に就任し、その業務に向き合いました。最初は見積りも出来ずに職人さんのアシスタントをする手探り状態でしたが、何とか最初の一ヶ月で順応することが出来ました。しかし、経営者と職人と大学院生の両立では、どれかが中途半端になってしまうと思い、意を決して大学院を中退する決断をしました。
しがらみの無い世界での新たなチャレンジ
大久保潤哉さんが新たに代表に就任しましたが、元請けの建築会社からの発注がない時期が2ヶ月ほど続いたことがありました。その時に大久保代表にあるアイデアが生まれます。大久保代表は、手を動かして物を作ることが得意です。それならばと、自分たちで物を作って売ることを決意します。電気工事の仕事の中には家具などに照明を埋め込む作業もあります。この事をヒントに、家具作りの企画を2017年に始めました。それから様々な人の協力の下に家具作りや溶接を学びました。そして遂に2020年にハンドメイド家具を製造・販売するTOMOSU家具事業部「TOMOSU FURNITURE」を墨田区東駒形に設立しました。
大久保代表は千葉県出身だったこともあり、千葉の木材を使えないかと仕入先を探してみました。そして、杉という木の中では非常に堅く、高級木材として流通している千葉の山武杉に出会います。山武市役所に石井工業株式会社(千葉県山武市)という木材卸と建築業を営んでいる会社を紹介してもらい、4代目の石井代表に家具作りの基本から教わりました。本業の電気工事のすき間時間を使いながらなので、技術と知識の習得には時間を要したそうです。そして、4年間の準備期間を経て、現在は山武杉など国産の無垢材にこだわった家具を製作しています。主な商品は、天板のサイズオーダーができるテーブルやチェア、シェルフに加えて、電気工事会社だからこそできる照明などを組み合わせたオーダーメイドの家具などです。
完成した家具(左写真)、形と色の組み合わせが豊富な脚部(右写真)
木と鉄と照明を組み合わせられる商品
温かみがある美しい木目の天板
ポリッシャーで天板を磨く様子
節に色を合わせた特殊な樹脂系硬化剤で節を処理してから、職人が天板の表面だけでなく裏面まで、2~3時間も掛けて磨きを行っています。
鉄の加工も自社内で行う
鉄を切断や曲げなど加工する様子
テーブルには直線で構成された8種類の鉄脚から選択ができます。これも工房内で切断や溶接を行って作り出しています。
電気工事会社だからこそできること
照明が施されたダイニングテーブル
電気工事には国家資格が必要です。資格を持つ職人が照明の取り付けを行っています。意外と家具製造所では出来ないため強みとなっています。
マーケティングの知識を活かした販売戦略
木と鉄と照明を組み合わせた低価格な家具という製品コンセプトですが、2020年以降のウッドショックにより木材の仕入れ値が大幅に上昇し、そのコンセプトに危機が訪れます。しかし、低価格のサイズオーダー家具というコンセプトを変えないために、お客様の満足度を下げない範囲での内容を変えることにより、販売価格を変えませんでした。販売面では、主に自社サイトと楽天市場、Yahoo!ショッピング、CreemaとECサイトを複数活用し、販路開拓と知名度向上に努めています。これらのECサイトへの流入量が増えることでGoogleでの検索結果が上位に表示されることに気が付き、ECサイトのメンテナンスには力を入れているそうです。これらの商品は、開発時から製品コンセプトのストーリーや背景をきちん描くことでブランディングされています。そして、商品が売れ続けるための最適な売り場としてECサイトを選びました。大学院時代に得たマーケティングの知識を十分に活かし、お客様にとって必要な情報を端的に伝えることができ、消費に結びつくようなサイトの構成を心掛けているそうです。
EC(オンライン)から拡がるオフラインのビジネス
蔦屋書店でのオファー出品の様子
最近ではGoogle検索で工房を知ったお客様が、テーブルの高さや脚の色など、より細かいオーダーやフルオーダーするために直接工房を訪れることも増えているそうです。特にダイニングテーブルはある業界から定期的にまとまった注文が来るなど、TOMOSU FURNITUREの経営の下支えとなっているとのことです。ある日、蔦屋書店さんで国産材や無垢材を使った企業のイベントに出店させて貰ったところ多くの反響がありました。また、デザイナーさんや建築資材ロスという課題に取り組むHUB&STOCK(通称、ハブスト)さんとの出会いで、今後の取り組みの幅も広がるとの期待を持っておりました。インターネット上のEC(オンライン)からオフラインへと販売チャネルが増えることにより、例えば、木目を好まれる方やそうでない方など様々なニーズを知ることが出来たそうです。今後は天板の素材や形のバリエーションを増やしてお客様の要望に応えていきたいと大久保代表は仰っています。家具事業部としてEC(オンライン)とオフラインのビジネスという2軸で売上を伸ばし、本業の電気工事会社での経営の安定も目指されています。24歳で会社を引き継いだ大久保代表も33歳となり、会社の規模や雇用形態の変更など、新たなチャレンジに踏み出されています。
働きやすい職場環境
現在、TOMOSU FURNITUREの従業員はアルバイトとフリーランスの計10名です。本業はデザイナーの方や芸術大学で将来は作家を目指す学生などが、自身の将来に向けて、技術習得と向上のために働いています。
天板を磨き上げている様子
動画
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このページは産業振興課が担当しています。