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更新日:2020年3月31日
取材日:2020年3月26日
担当者:観光課 矢田
株式会社 和興(墨田区緑2-15-9)
墨田区緑に本社をおく株式会社和興は、自社縫製工場を持つ100%日本製のアパレルOEM・ODM生産メーカーである。メリヤスと呼ばれる編み物のカジュアル衣料が中心で、昭和28年の創業以来日本製を貫いている。この会社に、新入社員として一昨年入社したのが小林真琴さんだ。すみだで活躍する若い力にフォーカスして、会社のことや小林さんがもつ考えについて話をうかがった。
会社の外観
なぜ株式会社和興へ入社したか
「別に、特別服が好きなわけではなかったんです」と、意外な言葉がでてきた。小林さんは大学時代、毎年夏休みにホームステイでフィリピンを訪れ、現地の人と衣食住をともにするなかで、環境破壊や劣悪な労働環境のなかであらゆる商品が大量生産される現場を目の当たりにし、安さや量ばかりを求める社会に疑問を感じたという。
そんな経験から、自分の進路を考える上で「地産地消」「地域経済」に興味を持った。作り手・売り手・買い手みんなの顔が見える状態こそが、ものの価値や人とのつながりを生む。モノに溢れる今だからこそ、地産地消が求められるのではないか。そこで地域のものづくり産業に目を向け、墨田区の合同企業説明会に足を運んだことをきっかけに、和興と出会った。
和興のホームページ
何を作る会社か、分野や職種にはこだわりがなかった小林さんにとって、多くのものづくりを扱う企業の中から最初に和興の魅力を感じるきっかけとなったのは企業ホームページだった。中小企業というとホームページが無かったり情報の入手がなかなか難しい中で、和興は事業内容がまとまっていて安心感があったという。会社の理念に共感し、入社を志望した。
着る人の悩みや課題に寄り添う服を作る
小林さんの今のメインの仕事は縫製工場の企画営業。営業とひとえに言っても、話を聞いているとコンサルのようだと感じた。完全受注型のOEM事業もあるが、お客様の要望・悩みをかたちにしていくというODM事業に和興は力を入れている。例えば、自閉症の子供の“おむついじり”を解消するための服を作ってほしい、というオーダーがあったとき、オムツのなかに手を入れたり脱衣の衝動がある子どもに対して、一見すると上下別々のおしゃれ着だがズボンとトップスが繋がっていたり、背中のチャックが下ろしにくくなっているなど、細かな工夫を施すことで、着る人の課題を解決する。他にも、身長や体形で悩みがある人や、企業それぞれの仕事に合ったユニフォームなど、着る人の生活に寄り添った服を作っている。
画像中央が自閉症の子供向けの服。左が身長が低い人向け、右が企業ユニフォーム
この仕事の中で小林さんが一番大切にしているのは、「共感」。相手の状況や想いに共感し、相手が求めるものを引き出すのが小林さんの仕事だという。今や機械が発達し、技術では差別化がなかなか図れない時代になっている。そこで必要なのは、「いかに意味のあるものを作るか」ということだとも話してくれた。
「和紙の服」プロジェクト
小林さんが仕事の中で苦労しているのは、「伝えること」だという。ものづくりの会社には長年培った技術があっても、それをどういうかたちで世の中に伝えればいいかというノウハウがない。その葛藤の中で生まれたのが「和紙の服」プロジェクトだ。
和紙の服
“天然のエアコン”ともいえる吸湿性と保湿性を兼ね備えた和紙100%にこだわり、しかも環境に負担の少ないサスティナブル素材という点に注目している。紙を糸にし、生地にし、縫製、染色…と、考えるだけで途方もない製作過程だが、和興の技術力(日本のものづくりの技術力)があるからこそ取り扱いの難しい新素材の製品化に踏み切った。
このプロジェクトの背景には、会社の顔となるような商品を作ることで、これをきっかけに和興を知ってもらえたら、という「伝える」ツールにしたいという意図がある。服の価格が安くなり、デザインが画一化されているような昨今において、環境への配慮や一つ一つの商品に思いを込めている会社だということに「共感」してくれるお客様と一緒に、新たな商品づくりに取り組んでいきたいと小林さんは言う。
メイドインジャパンをすみだから
小林さんは、この和紙の服を地元すみだから届けていきたい、と話してくれた。小林さんが目指す地産地消は、「作る・売る・使うという経済サイクルを地域で回していく」というものだ。和紙の服は、地元すみだの人々に知ってもらえるよう、これから本格的に販売予定とのことで、今から手に取るのが楽しみだ。
小林真琴さん
「ものづくりの会社に入ったのに、何も知らない、何も作れない。そんな私だからできること」常にそう考えながら仕事に取り組んでいる、という小林さんの言葉が印象的だった。
目の前のことに真剣に、ていねいに、熱く向き合うのは、すみだで活躍する人たちに共通している。和興によるメイドインジャパン・メイドインスミダのものづくりで、人々のファッション生活がより彩られることだろう。
話を聞かせてくれた小林さんへの感謝とともに、今後のますますの活躍を期待したい。
関連情報
和紙の服 今年5月上旬から和興公式オンラインショップより販売開始予定
(外部サイト)
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